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zoom RSS 【エピジェネティクス入門 三毛猫の模様はどう決まるのか  佐々木裕之著 岩波科学ライブラリー101】

<<   作成日時 : 2005/08/04 18:28   >>

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遺伝子のあるなしだけではうまく説明できない遺伝現象があるそうです。そのような現象の機構を、エピジェネティクスという新しい分野では解明しつつあるということを少し前に知りました。面白そうだ、とは思っていましたが、なかなか一般向けの本が無く、名前は知っているが何のことかわからない状態が続いていました。そんな中、書店の科学一般向けの書棚にこの本が置いてありました。早速読んでみました。読んだ印象は、「もっと詳しい専門書を読まなければいけない方には不要。分子生物学の知識が無い人にも不向き。10年くらい前の分子生物学の知識があり、最近の話題も少し知っておきたい方なら、いいかも。あとから言葉を調べるためにも索引は欲しかった。」

エピジェネティクスとは、DNAの配列に変化を起こさず、かつ細胞分裂を経て伝達される遺伝子機能の変化やその仕組み、またはそれを追求する学問のことだそうです。と、言われても、これだけでは良くわかりません。ということで、三毛猫の毛の色が例に出されます(といっても100頁弱の本のうち、P8-10とP47-48にしか例がありません)。

猫も人間などと同じように、メスはX染色体を2本持ち、オスはX染色体が1本とY染色体を1本ずつもっています。メスの2本のX染色体のうち、どちらか片方のX染色体を不活性化する機構を働かなくさせるとそのメスは死んでしまうそうです。ということで、猫のメスは、2本あるX染色体のうち、1本しか使っていないのだそうです。

さて、どちらのX染色体を使わないようにするか、どのように決まっているのでしょうか。この本によれば、発生の初期に細胞毎にランダムに1本が決まるのだそうです。そして、その後細胞分裂をしても、使われなくなったX染色体は使われないままなのだそうです。

これが、三毛猫の毛の色とどのような関係にあるのか。実は三毛猫の白い部分以外の色毛を黒か茶に決める遺伝子がX染色体にあるそうなのです(白い色を決める遺伝子はX染色体には無いそうです)。ランダムに1つのX染色体が使われなくなることで、白・黒・茶の三色の三毛猫が出来上がるというわけです。

具体的に説明しましょう。三毛猫のメスに2本あるX染色体の片方をA、残り片方をBとして、Aに黒い毛を作る遺伝子、Bに茶色い毛を作る遺伝子があるとしましょう。猫の受精卵がある程度分裂した発生初期に、ある細胞ではX染色体Aが使われなくなり、別の細胞ではX染色体Bが使われなくなります。その後受精卵が猫になると、X染色体Aが使われなくなった細胞からできた部分はX染色体Bにある茶色い毛を作る遺伝子を使って茶色の毛を作る。それとは逆にもともとX染色体Bが使われなくなった細胞からできた部分はX染色体Aにある黒い毛を作る遺伝子を使って黒の毛を作る。白い部分以外はそのようにして毛の色が決まり、三毛猫が出来上がるのだそうです。

三毛猫にはオスが滅多にいないのはオスがX染色体を1本しか持っていないため、”二毛”にしかならないからです(オスの三毛猫はXXYの染色体を持ち、これは親の生殖細胞が減数分裂の際に異常を生じたために生まれる個体で、かなり稀。)。

こういう仕組みがエピジェネティクスなのだそうです。DNAには変化は起こさず、細胞分裂を通じて伝えられる遺伝子機能の変化というわけです。

その後、DNAのメチル化・ヒストンという蛋白質のアセチル化といったことがエピジェネティクスに重要な役割を持っていることが説明されていきます。DNAのメチル化・ヒストンのアセチル化によって、その部分の遺伝子は転写されにくくなるそうです。また、生物学・医学的にどのような意義があるかについて、病気との関連で説明されてます。癌細胞ではDNAのメチル化が正常の細胞よりも多い部分や少ない部分があり、癌遺伝子の活性化や癌抑制遺伝子の不活性化に一役買っているようです。癌遺伝子がたくさんあるとか、癌抑制遺伝子が無いとか、そんな単純な理解を超える複雑な機構が働いているのですね。

エピジェネティクスとは、DNA発現の調節機構の分子生物学と理解しました。

エピジェネティクスというものについて少し知ることはできたとは思います。ただし、遺伝・DNAに関連する生物学・分子生物学の知識について簡単に説明されていますが、それでも全く知識が無い方は初めての難しい言葉のために読んでる途中で嫌になると思います。

科学啓蒙書としては 【植物の見かけはどう決まる 遺伝子解析の最前線  塚谷裕一著  中公新書】の方が楽しく読めたと思います。テーマというよりは書き方・読ませ方の問題なのでしょう。

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