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zoom RSS 『下』はフジテレビが好き? 【下流社会 新たな階層集団の出現 三浦展著 光文社新書】

<<   作成日時 : 2005/09/24 10:03   >>

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日本社会に階級・階層があるというのはいろいろな人が述べていると思います。例えば小倉千加子は、このブログでも取り上げましたが(2004年10月7日)、女性は「階級」により結婚に対して求めるものが違うということを述べています。このようなことを言うのは学者が多いと思いますが、著者はマーケティング活動を行っていらっしゃる方のようで、その観点からと思われる調査もあります。この本は2005年9月初版の最近の本です。

この本では、階級意識(収入・資産等に基づいた階級とは違うようです)と世代(団塊世代や団塊ジュニアなど)の関連について、調査結果をもとに論じられています。世代は、昭和ヒト桁世代・団塊世代・新人類世代・団塊ジュニア世代とわけられており、それぞれ1926〜1934年生まれ・1946〜1950年生まれ・1961〜1965年生まれ・1971〜1975年生まれと定義して調査されたとのことです。調査は2004年11月から2005年6月にかけて行われたそうです(p9-13)。最近の話ですね。調査対象数が、男性も含めた「昭和4世代欲求比較調査(欲求調査)」では各世代男女100人ずつの800人となっており、世代を性別に分けてものを言うときには少し数が少ない印象です。でも、女性だけの「女性階層化調査1次調査(女性1次調査)」では18〜22歳、23〜27歳、28〜32歳、33〜37歳の各世代500人ずつ計2000人を調査し、「女性階層化調査2次調査(女性2次調査)」では1次調査の各世代150人ずつと、数が増えています(p13)。

各世代を年齢にすると昭和ヒト桁が71〜79歳、団塊世代が55〜59歳、新人類世代が40〜44歳、団塊ジュニア世代が30〜34歳となるでしょうか。私は団塊ジュニアですな。

階級意識は「上」「中の上」「中の中」「中の下」「下」の5つに分けて尋ねたそうです。さすがに自分のことを「上」とか「下」とか言う人はあまりいないそうです(p88)。というわけで「上」と「中の上」をまとめて『上』、「中の中」を『中』、「中の下」と「下」を『下』とまとめられています。そうすると、『下』は「食うや食わずとは無縁の生活をしている。しかしやはり「中流」に比べれば何かが足りない(p5)」階級となります。『下』に足りないものは「意欲(p6)」で、『下』の人々は「中流であることに対する意欲のない人」(p6)ということだそうです。「上流」というのも金利だけで暮らしていける大金持ちのことではなく、「中の上」を指すそうです(p6)。

第3章以降で調査結果が紹介されていきます。数字が多く、なかなか読むのが大変ですが、章や節のタイトルが刺激的なので、それらをいくつか紹介すると、

団塊ジュニアの「下流化」は進む!(第3章タイトルp88)
500万円が結婚の壁(p125)
派遣社員、フリーターの結婚、子育ては不利(p146)
家族形態は多様化したが、幸福の形は必ずしも多様化していない(p151)
自分らしさ志向は「下」ほど多い(p157)
「個性を尊重した家族」も「下」ほど多い(p162)
低階層の若者ほど自己能力感がある(p164)
自分らしさという夢から覚めない(p166)
自分らしさ派は、未婚、子供なし、非正規雇用が多い(p168)
「下流」の男性は引きこもり、女性は歌って踊る(第6章タイトルp178)
「下」は自民党とフジテレビが好き(p186)
上流は社交的、下流はだらしない(p209)
上流はゆとり教育が嫌い(p226)


いくつか、興味深かったことを取り上げてちょっと考えてみます。

団塊ジュニア世代の私としては、この世代で下流化が進んでいるというのは他人事ではありません。データを見てみますと、欲求調査では団塊ジュニア世代で『下』が200人中79名(p90表)おり、39.5%を占めています。同じ表では、『上』は200人中29名で14.5%、『中』は200人中92人で46%です。団塊ジュニアでは『下』は『上』の約2.7倍、『中』の約0.86倍となっています。他の世代は団塊ジュニアよりも『下』が減って『中』が増えています(p90表3-1)。団塊ジュニア世代では他の世代よりも『中』が『下』になってるんですね。そういう意味では団塊ジュニア世代は下流化が進んでいるのかもしれません。

収入と婚姻率の関係や、自己能力感については他の研究結果でも示されているようですが、『下』が自民党とフジテレビ好きというのは驚きでした。見ているテレビ局の分析というのは、どの番組のスポンサーになってCMを流すかという企業側の問題もあり、マーケティングならではの観点だと思います。データを見ますと、欲求調査を基にしています。『下』がフジテレビ好きという根拠は、団塊ジュニア男性が見る朝のニュースのテレビ局は、『上』はNHKが33.3%で最も多いがフジテレビは16.7%、一方で『下』はフジテレビが39.6%で最も多いがNHKは10.4%しか見ていないというデータです。面白いことに『中』ではNHKもフジテレビも27.5%で同率首位です。統計解析していないから正確なことはなんともいえませんが、『上』と『下』では朝に見る番組には差がありそうな感じですね。支持政党ですが、団塊ジュニア世代の『上』では自民党8.3%、民主党16.7%、支持政党なし75%、それに対して『下』では自民党18.8%、民主党18.8%、公明党2.1%、支持政党なし60.4%となっています。『中』では自民党15%、民主党12.5%、公明党5.0%、社会民主党2.5%です。本文では「団塊ジュニア男性の『下』は政治意識が強く(p189)」とあります。今回の調査ではそう言えそうですね。もっと対象数を増やすと確実なことが言えるのでしょうけれど。でも、タイトルを正しいとすれば、フジテレビの高視聴率とNHKの受信料不払いの問題や、今回の選挙での自民党の大勝を説明できそうです(『上』より『下』の方が2.7倍いるわけですから)。支持政党に関して言えば、『下』は社会政策重視の政党にを支持するだろうと思っていましたが、違うところが「中の下」が多い日本の階級社会の特徴なのでしょうか。

p119では団塊ジュニアの階層意識と貯蓄額の表があります(表4-3)。貯蓄額は階層違識別に差がある(p118)とあり、おおむねそのとおりのようです。しかし、1000万円以上の貯蓄額がある団塊ジュニア男性のみに注目すると、表の数字から実際に計算すると1000万円以上貯蓄があるのが15人、そのうち、階級意識が『上』が4人、『中』が6人、『下』が5人となります。これを見ると1000万円以上の貯蓄額のある15人の階級意識の出現率には差が無いようで、どうも1000万円以上の貯蓄額がある団塊ジュニア男性は別の部分で階級意識を決定しているようです。一方で、150万円未満の貯蓄額の42人では、『上』1人、『中』14人、『下』27人で、こちらは貯蓄額により階級意識が決定されているようです。まとめると、この表を見るだけでは、貯蓄額が150万円未満だと階級意識は低くなるが、貯蓄額が1000万円以上あってもそのこと自体は団塊ジュニア男性の階級意識には影響を与えていないといえそうです。1000万円以上も貯蓄がある人間の階級意識が『下』というのは納得できませんが、これはこの調査が階級意識しか調査していないことの限界でしょう。1000万円あっても『下』と答えた人にとっては、『上』と意識できるためには金に加えて何かが必要なのですね。私にはわかりませんが。なお、団塊ジュニア女性の『上』の数字を全て足しても94.1%、実数を計算しても16人と表の上のほうにある総数17人と合いません。間違ったのでしょう。

最後の方で「機会悪平等」の主張というのがされています。その中で、親の階級で子の将来が決定される社会を防ぐための方法が提案されています。提案の一つの下駄履き入試はあまりにも悪平等で賛成しかねますが、その他の提案は条件や社会状況によっては賛成するかな、と思います。

企業が既に階級社会へ対応しつつあることも紹介されています(p218-220)。階級社会はもう現実になりつつあるようです。

話ががらりと変わりますが、アメリカ合衆国でのハリケーン被害をみると貧しい人々が深刻な被害を受けていました。食料を手に入れるための略奪もあったようです。あまりにも大きな貧富の差は社会を不安定化するのかもしれません。そんなニュースを見てから、この本を読むと、これからの日本がどうなるのか、少し不安を覚えます。

誤差の比較的大きなデータに基づいていると思いますが、『下』のTVの好みを検討したりと面白い観点が取り上げられているのは確か。正確な議論には、少し古い本ですが『不平等社会日本 さよなら総中流 佐藤俊樹著 中公新書』の方を。

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