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zoom RSS 【ほめるな 伊藤進著 講談社現代新書】

<<   作成日時 : 2005/11/13 17:27   >>

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ほめる教育というのがはやっているのですね。子どもの良いところを(良いところが無くても)見つけて(無理やり)ほめて教育するという方法のようです。そのほめる教育が長期的に見て教育の目的を果たしていないということを述べ、新しい教育方法としてインタラクティブ型支援を提唱しています。著者は教育大学の先生で、専門はコミュニケーション心理学だそうです。

ほめる教育の何がいけないのか。ほめる教育は動物に芸を教える方法と同じで、指示に従って動く受動的な存在をつくり出す(p43)、そして「指示待ち人間」をつくり出してしまう可能性が高い(p44)というのです。それ以外にも、人の評価を第一に気にする人間になってしまう(p105-108)、うすっぺらな自信をもった人間を作っている可能性がある(p108-111)、ほめられないとやる気が無くなる人間になる(p98-101)など、著者が関わりあった問題例が、ほめる教育によって生じた可能性が示唆されています。ちなみに、【下流社会 新たな階層集団の出現 三浦展著 光文社新書】で低階層の若者ほど自己能力感が強いと書かれていましたが、これもほめる教育のためなのでしょうか。

絶対にほめてはいけないのか、というと、心からほめることまで否定しているのではないと第5章で述べられています。ほめる教育のほめ方は意図的にほめて相手に影響を与えることが目的・意図であり、それに対して心からほめることは、ほめたいからほめるのであり他の意図が無いという違いがあるそうです。だから、自然にほめる場合にはほめる教育のような指示待ち人間や他人の評価ばかりを気にする人間を作ることは無いということです。

しかし、自然にほめる場合にも問題が無いわけではないそうです。自然にほめた場合でも、そのことを好きでやっているという内発的動機付けによって行われていた行動を、何か報酬がもらえるからやるという外発的動機付けによる行動にしてしまい、報酬が無ければ何もしないということが起きる可能性があると述べられています。だから自然に心からほめることも、本人が内発的動機付けによって行っている場合には抑えるようにするのが良いであろうということです。難しいですね。

同じ著者の【創造力をみがくヒント 講談社新書】では内発的動機付けを保ち続けるために大切なこととして、活動そのものに内在する面白さを感じとろうとする心の姿勢を持つ、報酬・評価・競争には心理的な距離をおく、自分が面白いと感じることを大事にする(p143-144)ことが挙げられています。実例として息子さんが時刻表を通して文字を覚えた経験をだされ、内発的動機付けに基づく行動がかなりの成果をもたらすことが解説されています。好きこそ物の上手なれという格言の通りですね。

最後に、著者はほめる教育の代わりにインタラクティブ型支援というのを提唱しています。教育ではなく支援です。これがポイントなんでしょうね。著者によれば3つの条件があり、一人の人間として尊重し、コミュニケーションが双方向的であること、コミュニケーションが創造的なことだそうです。創造的というと難しいですが、著者によれば自分自身で工夫・努力することだそうです。具体的なインタラクティブ型支援の例として、著者が院生時代に経験したことが紹介されています。著者はちょっと目立つタイプだったようで、いろいろ教官との間に苦労があったようですが、ある先生からのインタラクティブ型支援により自分の生きる道を見つけられたようです。

ほめて駄目になった実例はあってもほめなくて良くなった実例は無いので、ほめないことがいいのかどうか判断ができませんが、必要以上にほめることはやめたほうが良いようです。ほめなくったって好きなことは勝手にやって上達していくものなんですね。

なお、著者近影は1998年第一刷発行の【創造力をみがくヒント】のものより格好いいです。この髪型のほうが似合ってます。

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三余亭
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