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zoom RSS 【アインシュタインの思考をたどる 内井惣七著 ミネルヴァ書房】

<<   作成日時 : 2005/12/31 11:36   >>

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今まで取り上げてきた科学哲学関連の入門書とは異なり、時空の哲学という科学哲学の具体的分野の本ということになります。物理学の解説が多いですが、哲学書です。本書ではアインシュタインの一般相対性理論を重要な部分を述べ、時空の哲学の「手始めの部分(まえがき B)」を解説されています。

時空の哲学をめぐる状況は「欧米でのこの分野の研究のレベルは高く、日本のレベルは限りなく無に近い(まえがき @)」ということで、著者は「こういった状況を少しでも改善しなければならない(まえがき @)」と思い、相対性理論とそれに関連する哲学を勉強されたそうです。一般相対性理論を勉強されたのは50歳を過ぎてからだそうで、すごいですね。見習わないといけません。

ところで、先日、特殊相対性理論を解説した「図解・わかる相対性理論」を取り上げましたが、一般相対性理論はその本の中で、最後のほうで触れられているのみ。「アインシュタインの思考をたどる」でも「一般性相対性理論が特殊相対性理論に比べて格段に難しい(まえがき @)」と書かれていています。そんな難しい一般相対性理論を解説して、その後で哲学の解説なんて難しすぎて読めやしない、と思われるかもしれません。確かに、相対性理論の解説には「図解・わかる相対性理論」でも取り上げられなかったミンコフスキー空間やメトリック、ガウス座標など、読み進めるうえでつまずきそうな場所が結構あります。p24-46、p86-94、p102-107、は物理や数学の素養が必要かもしれません。私は、多分あんなこと言ってるんだろうなと推理して読みましたが、ミンコフスキー空間のメトリックの図示の部分(図21 p28)とその解説は、そんなもんだと割り切っちゃえばいいんですが、割り切れない普通の人は多いと思います。(だから「図解・わかる相対性理論」ではミンコフスキー空間を持ち出さなかったのだと思います。)

第6章時空の哲学入門で、ニュートン力学での時間と空間は絶対時間・絶対空間として考えられたこと、それに対しライプニッツが時空の関係説を唱えたこと、マッハが同じような考えからニュートン力学を批判したこと、現在、関係説の立場からの力学の再構成を行っているグループがあることなどが解説されています。まえがきで「概念的変革に対しては(中略)概念にうるさい哲学者のほうが敏感(B)」と述べられている通り、一般共変性と一般相対性の違いでアインシュタインも混乱していたことが指摘されています(p164-165)。こういうところはやはり哲学者の著書でないと読めないところですね。

刺激的だったのはイギリスのフリーの物理学者・哲学者(ちょっと怪しげですが・・)ジュリアン・バーバーの仕事の紹介です。詳しい手順をきちんと追ってみないと評価が困難だと思いますが、本書によれば、「相対主義の概念だけを使って(p177)」「相対主義力学が実際に構成された(p177)」。ということで、ニュートン力学での絶対空間・絶対時間の導入に対する反論がされるようなのです。もちろんいろいろ問題はあるようですが(テクニカルな工夫については(中略)批判がある(p179))、「哲学的な動機からこれだけの具体的成果を引き出した(p179)」という、物理学者がやらないなら俺がやるという心意気を感じます。実際にできちゃうところが格好いいですね。2つの領域で能力があるなんてうらやましいです。

著者の一般相対性理論は Exploring Black Holes E.F. Taylor、J.A. Wheeler 著 Addison Wesley Longman(2000)という教科書に負うところが大きいそうです。Taylorのサイトはhttp://www.eftaylor.com/だそうですので、興味のある方は一度見てみてはいかがでしょうか。

難しい本でした。

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