三余亭

アクセスカウンタ

zoom RSS 【患者側弁護士のための実践医師尋問 加藤良夫著 日本評論社】

<<   作成日時 : 2006/05/25 00:38   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

医療訴訟に巻き込まれたわけではありませんが、いつ自分も巻き込まれるかわからんと危機感を持っております。私が医療訴訟に巻き込まれて一番困るのは自分が被告になることで、医療ミスはしないよう日ごろより心がけており、【医療過誤・医療事故の予防と対策 病・医院の法的リスクマネジメント 森山満著 中央経済社】も読んで予見可能性と回避義務、説明義務など、気をつけて仕事をしています。もちろん、ミスをしないようにするのが第一ですが、万が一、本当に万が一の時は、自分はどのように裁判で尋問されるであろうか、ということが気になりまして、法律関係の書物を探していたところ、書店でこの本を見つけました。勉強になりました。

この本は医療機関・医師を訴えた側の弁護士のための本ですから、医療ミスをしたであろう医師からどのように患者に有利な証言を引き出すかが書かれています。第3章尋問の成功と失敗 では、どんなときに成功するか、どんなときに失敗するか、書かれています。失敗するのは、どんな仕事でもそうなんでしょうが、準備不足であることが一つ。そして、これが面白かったんですけど、尋問者の思い入れが強すぎるときにも失敗するとのことです。原告を意識しすぎたり、尋問者が冷静さを失ったり、演出過剰でも失敗するとのことでした。ある程度の冷静さが無ければうまく仕事ができない、というのは医師もまた通じる部分があります。また、裁判で勝つためには原告が知りたいと思ったことでも聞かないほうが良い場合もあるということで、その点は、裁判というのは真実の解明というよりは利益を得ることが重要なのだと思いました。

順番が前後しますが、第1章尋問に臨む前に では、勝負するポイントとして、
第一に被告医師・医療側にとって、つかれると一番痛いところであり、第二に裁判所に医療側の「落ち度」としてわかりやすく、過失としてとらえやすいところであって、第三に何とか立証ができそうなところということになる。

と書かれていることからも、裁判は勝つことが目的であって真実の解明はあってもなくても良いものなのだという印象です。裁判所に如何にして自分に有利なように判断してもらうかの勝負だと思いました。(私は法学は全くの素人ですので、誤解があったらすみません。)

とはいえ、”主尋問では文献等を示して証言内容をオーソライズする必要があるだけでなく、反対尋問では、文献等を示して反論をしていくのが基本である。(p9)”ということですから、行ったことが標準の医療行為であったかどうかは争われるようです。医師が文献等と異なる診断・治療を行った場合の裁判は、医師は不利になりそうです。また、医師を訴える側も反論するためには文献を武器にするようです。以下のように書かれています。
証人等の医療上の経験則に関する見解を弾劾するためには、成書や文献や専門家の証言調書や鑑定意見書で迫るほかはない。(p17)

ということは、医師が文献とは異なることをやっていれば、その医師は不利になる可能性があるわけです。前にも書きましたが、今はwebで色々と医学情報が入手できます。訴えた側が標準的な医療を受けていないということが示されれば大変有利でしょう。しかし患者が文献の治療は受けられない状態だということが示されれば、また話は違ってくるのではないかと思いますので、一概には言えませんけれども。

医師のプライドを傷つけたり持ち上げたりする、レトロスペクティヴ(後ろ向き、現在から過去を振り返る)とプロスペクティヴ(前向き、その時点でどんなことがおきるか考える)という言葉を使って望んだ証言を出す、などのテクニックは勉強になりました。

また、証人に対して裁判所の持つ印象も重要なことが書かれており、証人が医療裁判に対してどのような心情であるか、証人がどのような人間であるか、ということが裁判所がその証人の証言をどう判断するかに影響することも書かれています。教科書を書いた医師を頭が良くないと言い切る証人(医師)を例に出して、”裁判所は多分こういうタイプはあまり信用しないと思われる(p33)”と書かれています。せっかく被告医師を有利にするように裁判で証言しようとしても、こんなことではまるっきり逆効果です。訴える側からすれば、このようなタイプの医師が上司で居るなら、証人にして反対尋問すればいいわけです。信用ならないなと判断されて、訴える側が有利になるでしょう。

第U部以降は、実際の裁判でのやり取りが書かれています。法廷でのやり取りとはこんなものかと、大変面白く読ませていただきました。不謹慎かもしれませんが、下手なドラマよりも面白かったです(医学用語が出てきますので、なじみのない方には難しいかもしれません。)。

カルテ改竄も紹介されていましたが、これは印象が悪いですね。ごまかした感じがひしひしとします。本当に印象が悪いです。

法廷でのやり取りを読みまして、訴訟になったものは訴訟になる理由があると思いました。そういう事例を選んで紹介しているのでしょうけれども。

私は大変興味深く読ませていただきましたが、4800円と高いのが難点。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
【患者側弁護士のための実践医師尋問 加藤良夫著 日本評論社】 三余亭/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる