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zoom RSS 道立羽幌病院の呼吸器外しと射水市民病院前外科部長のインタビューについて

<<   作成日時 : 2006/08/04 12:38   >>

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道立羽幌病院での呼吸器外しは結局不起訴になりました。前にもそんな話がありましたが、正式に決まったようです。毎日新聞の記事です。

北海道・道立羽幌病院の呼吸器外し:医師、不起訴に 旭川地検「死亡、関係立証困難」

 北海道羽幌町の道立羽幌病院で04年2月、自発呼吸できない男性患者(当時90歳)が人工呼吸器を外されて死亡した事件で、旭川地検は3日、殺人容疑で書類送検されていた担当の女性医師(34)を容疑不十分で不起訴処分とした。延命治療中止を理由に医師が殺人容疑で立件された全国初の事件で、地検の判断が注目されていた。
(中略)
 調べに対し、女性医師は「家族の同意を得て呼吸器を外した」と供述していた。道警は、女性医師が独断で人工呼吸器を外した▽本人の意思を確認せず、家族への病状の説明も不十分だった−−などとして昨年5月、殺人容疑で書類送検した。【遠藤拓、渡部宏人】

 ◇延命中止に指針なく

 事件は、延命治療をどこまですべきかを医療現場に改めて問いかけた。延命技術が進歩する一方で、治療中止を巡る法整備や公的指針はなく、医師も患者・家族も戸惑う。

 羽幌病院を含む北海道立の7病院では、事件後も特に延命治療停止の基準は設けていない。「独自のルール作りは困難。国レベルの議論の行方を見守りたい」(道立病院管理局)と消極的だ。

 こうした中で自主的な指針づくりに取り組む医療機関も出始めている。
(中略)
 厚労省研究班(主任研究者、林謙治・国立保健医療科学院次長)は今年6月、延命治療の中止について「患者の人権を保護する法的整備が必要だ」とする報告書をまとめた。同省は今年度中の指針作りを目指す。
(中略)
 林さんは「延命治療の中止は、患者の希望をかなえる新たな医療行為を認めるかどうか、という問題だ。混乱を避けるためにも新たなルールは必要だ」と話す。

 一方、清水哲郎・東北大教授(医療哲学)は「終末期にはさまざまなケースがあり、一律の指針は望ましくない。作るのなら、患者らも参加し、多様なケースを想定したものにしなければ、問題は解決しない」と指摘する。【岸本悠、大場あい、永山悦子】

毎日新聞 2006年8月4日 東京朝刊


私は以前に書きましたが、一律な方針は望ましくないと考えております。清水先生と同じ意見のようですが、これは私が清水先生の「医療現場に臨む哲学」を読んだ影響かもしれないですね。

さて、羽幌病院での呼吸器外しが不起訴になったからでしょうか、朝日新聞で富山射水市民病院の外科部長のインタビューも出ていました。少し詳しい患者さんの状況がわかります。

呼吸器外し「6人は本人か家族の意思」 元外科部長説明
2006年08月04日06時14分

 富山県射水(いみず)市の射水市民病院で末期患者7人が人工呼吸器を取り外された後に死亡した問題で、患者の病状や亡くなる間際の状況を、関与した伊藤雅之・元外科部長(50)が3日までに朝日新聞社の取材に答えた。
(中略)
 伊藤元外科部長は「当事者としてきちんと説明したい」と実名で取材に応じた。「私がかかわった人工呼吸器外しの患者の情報を可能な限り公表し、深い議論と考察をしていただく機会になればと考えた」と話している。

 病名についてこれまで病院側は「がんなど」と発表してきたが、伊藤元外科部長によると、主治医としてかかわった6人のうち死因ががんと言えるのは2人で、その他は肺炎や急性腎不全などだったという。認知症で食事が取れず衰弱した状態だったケースもあった。元外科部長は、6人とも急変した病状に対応するために呼吸器を装着、回復できれば余命はまだあると判断した。その後、瞳孔や全身の状態から「脳死状態」と診断し呼吸器を外し、いずれも十数分から1時間で心停止に至ったという。

 また、6人は延命治療中止の「同意書」はないが、すべて「患者本人あるいは家族の同意を得た」と主張。事前に延命治療はしないと患者と家族が話し合っていた場合もあったと話している。

 残り1人は別の外科医が主治医だった。

 元外科部長によると、05年秋に亡くなった80歳代女性は認知症とパーキンソン病を患っており、肺炎で転院してきた。胃にチューブを通して栄養を補給していたが、急性腎不全などで心肺停止になり、呼吸器を装着し蘇生したものの脳死状態になったという。2日間様子を見て家族に病状を説明。「これまで延命治療してきた上に呼吸器につながれるのもかわいそうだね」と話すと、「助からないのなら」と家族は答えたという。

 また、膵臓(すいぞう)がんで入院した70歳代の男性はがんの進行に伴う多臓器不全で00年に死亡。伊藤元外科部長は、手術の結果を説明した後に病室で患者が「もう死ぬんだ」などと看護師に話していたことなどから、延命治療の中止について男性の意思を推定したという。
(以下略)


毎日新聞でもインタビューが出ていました。

富山・射水の呼吸器外し:「意思確認した患者は1人」−−前外科部長インタビュー

 富山県射水市の射水市民病院(麻野井英次院長)で末期患者7人の人工呼吸器が外された問題で、関与を認めている伊藤雅之・前外科部長(50)=現・射水市福祉保健部参事=が3日、毎日新聞の取材に応じた。主治医として関与した患者は6人で、うち1人は生前に直接本人から延命治療を望まない意思を確認し、2人については本人の意思が推定できたことを明らかにした。(中略)【富山呼吸器外し取材班】

 本人が延命治療を望まない意向を直接伝えていたのは、50代の女性がん患者。胃がん手術後に背骨に転移。抗がん剤治療の過程で女性は「最後は楽に逝きたい」と延命治療を望まない意思を伝えたという。
(中略)
 本人の意思が推定できた患者の1人は、膵臓(すいぞう)がんの70代の男性。手術後のやりとりで「痛みだけとってもらえれば、他の治療はしてほしくない」と話したという。

 また、肺炎だった90代男性は、家族の話やカルテや看護記録にある本人の発言から、延命治療を望んでいなかったことが分かったという。

 6人については、家族の希望で呼吸器を外した趣旨の記載がカルテにあるが、同意書はない。この点について「患者さんとの付き合いも長く、信頼関係は紙ぺらではない。『患者のために何をしてあげられるか』から医療が始まる。最大限、家族の意思に沿うよう心がけた」と話した。

 今回、実名を出しての取材に初めて応じた理由については「一部の病院で拙速なマニュアル作成へと短絡する傾向が見られる。『人工呼吸器外し』の患者さんの情報を現時点で可能な限り公表し、深い論議と考察をしていただく機会になればと考えた」と語った。

毎日新聞 2006年8月4日 東京朝刊


朝日新聞と毎日新聞の記事を総合すると、患者さんは、50代女性胃癌(意思確認あり)、70代男性膵臓癌(意思推定あり)、90代男性肺炎(意思推定あり)、80代女性認知症・肺炎(家族の同意あり)。朝日新聞によると死因が癌であるのは2名とのことなので、他の4名の方について私はコメントしにくいです。80代以上だと、心肺停止して呼吸器をつけても回復するのが難しい場合が多いのではないかと思いますが。

「一部の病院で拙速なマニュアル作成へと短絡する傾向が見られる。」という意見には同感です。医療機関が面倒なことに巻き込まれたくないという気持ちがわからなくもないですが、個々の患者さんの状況に対応しなくてどうする、と思います。治療行為の停止についての条件を満たしていれば法的には問題ないと判断して、個々の状況に応じた対応をするべきではないでしょうか。

同意書を必須のように言うのもどうかと思います。検査や治療についての同意書は大切ですが、延命治療中止の同意書にサインしろというのは、患者さんの立場になれば死を突きつけられるようなものではないでしょうか。延命治療はしたくないが、同意書にサインもしたくないと迷われる方も多いでしょう。アメリカでも書類が揃わなくてもめることがあるようなことは前に書きました。

最後になりますが、東海大安楽死事件の判決 要旨((朝日新聞 1995年(平成7年)3月28日夕刊 3版)) による治療行為の中止の要件は以下のとおりです。この条件を満たせば、今回問題とされている件は、法的には何も問題ないと(法的拘束力はないようですが)、考えています。

1.患者が治癒不可能な病気に冒され、回復の見込みもなく死が避けられない末期状態にあること
2.治療行為の中止を求める患者の意思表示が存在し、治療中止を行う時点で存在すること
3.治療行為の中止の対象となる措置は、薬物投与、化学療法、人工透析、人工呼吸器、輸血、栄養・水分補給など、疾病を治療するための治療措置及び対症療法である治療措置、さらには生命維持のための治療措置などすべてが対象となる。どのような措置をいつ中止するかは、死期の切迫の程度、当該措置の中止による死期への影響の程度等を考慮して決定される。

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射水市民病院の呼吸器外しが不起訴になった件
ちょっと出遅れた感があるのですが、射水市民病院の呼吸器外しの件が不起訴となりました。 ...続きを見る
三余亭
2009/12/24 02:21

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