三余亭

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zoom RSS 患者が感謝しているからといって病気の腎臓を移植することを正当化することはできない。

<<   作成日時 : 2006/11/04 17:28   >>

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毎日新聞で、宇和島徳洲会での病気の腎臓を移植した医師らの記者会見の記事が出ていました。
愛媛・宇和島の疾患腎移植:「すべて出会い頭」 執刀医、正当性を強弁

 愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で4日開かれた会見で、病気のために摘出された腎臓を別の患者に移植した経緯が初めて明かされた。執刀した万波誠医師は「出合い頭」という言葉を使い、「計画性は全くない。その時腎臓があるかどうかだ」「困っている腎不全患者のために人工透析より費用がかからず、生活の質が向上する」として移植を進めるべきだとの持論を展開した。

 報道機関に突然、院内の調査結果として疾患腎移植を公表してから2日後。会見に臨んだ万波医師は、開き直りともとれる姿勢で正当性を語った。万波医師らとの主な一問一答は次の通り。

 −−移植に耐える腎臓だったのか。

 分からない。ドナー(臓器提供者)に対しては、腎臓を使えるんやったら使わしてほしいという口頭の了解は取っている。11例はすべて、腎摘出をしなくてはならないものだった。レシピエント(移植を受ける人)に対しては「がんの腎臓でも大丈夫か」と言って了承を取った。(中略)
 ◇移植受けた女性「感謝している」

 今年9月に移植を受けた宇和島市の女性(69)も会見。病気を持つ腎臓を移植されたことについて「これで悪くなったら仕方がない。万波先生に(手術を)しませんかと言われたので手術をした。偉い先生と聞いていたので、二つ返事で『します』と答えた。透析は3年前から受けており、病気の腎臓への不安はなかった。感謝しています」と語った。


読売新聞では、
 この会見後、引き続き、9月に同病院で病気腎の移植手術を受けたという県内の女性(69)が心境を語った。女性は3年前から透析を続けており、「万波先生から移植をした方がいいと薦められ、二つ返事でお願いした。(弟が手術の説明を聞いたので、)私はどのような腎臓かは直接、聞いていない」と病気腎だったことを知らなかったという。しかし、「今は、どんな腎臓かは気にしておらず、先生に感謝している。体調は良好で、農作業も出来る」と話した。


と、レシピエントに対しては簡単な説明で終わっていたようですし、それでよいのかどうか疑問があります。また、3年間しか透析を受けていない患者にそんなに緊急性があるでしょうか?そして、どのような腎臓か本人が聞いていないというものすごい大問題があります。個人的には、癌に罹患した腎臓を移植するという非常事態の医療を受ける必要は全くなかったのではないかと疑問が湧いてきます。人工透析を続けていたほうが癌の腎臓を移植されるよりも長生きできる可能性があるのではないでしょうか?

朝日新聞によれば、医師は次のようにも言ったようです。
「人の役に立つなら使って、と患者から言われた。その思いに誠心誠意応えて、やったことだ」と言い切る。

病気の腎臓が人の役に立つという説明も、嘘とは言いませんが、誇張が入っていたのではないでしょうか。

医師に感謝している患者をみれば、批判しにくくなるでしょうが、それでもこの医療は大問題だと思います。前のエントリーでも指摘しましたが、ドナーの治療もこのグループで行っているなら、ドナーに対して不必要な手術が行われた懸念もあるわけです。そのことの検証をすぐに行っていただき、結果を知りたいと思います。不必要な手術でなければよいのですが。もちろんレシピエント側の危険もあるわけです。レシピエントに癌が発生する可能性があるわけです。ドナーに対してもレシピエントに対しても、危険性が普通の移植医療より増すわけで、今回の、ドナーとレシピエントの治療を同一のグループが行うこと、疾患に罹患した腎臓を移植用に使うことは、通常の医療としては非難されるべきです。

医師は、まず目の前の患者のために最善になることをするべきだ、と私は思います。「この患者の腎臓があの患者に使えるから無理すれば体内に戻せるけど、戻さないであの患者に移植しようか」というような、目の前の患者に最善の医療を提供しない動機があるような医師は主治医になるべきではありません。それが結果的に多くの人を救うことになったとしても、それは目の前の患者に対する裏切りです。ドナーとなる患者さんに最善の医療が受けられることを保証する必要があると思います。移植のために腎臓を片方取られたということがないようにする必要があります。そして医師は患者の安全を考えるべきだ、と思います。癌の腎臓を移植して、その患者に癌も移植したらどうするつもりだったのか。

このような形態の移植が容認されるとしても、臓器を受け取るべきは臓器移植ネットワークで作られた提供待ちリストの上位の患者であるべきで、一医師が目の前に居る患者の優先順位を決めるべきではありません。他にも待っている人がたくさん居る、もっと長い時間待っている人、今回移植を受けた方よりも腎臓が必要な人がいるわけです。


朝日新聞
での泌尿器科専門医の言葉に全く同感です(強調は三余亭)。
 泌尿器科の専門医は「今回の移植に使われた臓器が健康な生体腎とはいえない、というのは言い逃れ。まず、十分な機能があってがんにかかっていないと担保されている臓器なら、患者本人に戻すべきだ。患者の同意を得るのにも十分な時間をかける必要がある。手術中の診断では腫瘍の良性か悪性かの判断はしにくく、移植をすべきではない」と話している。

毎日新聞での大島伸一先生の言葉にも全く同感です(強調は三余亭)。
 宇和島徳洲会病院の腎移植問題を調査している、日本移植学会の「生体臓器提供にかかわる特別委員会」の大島伸一委員長(泌尿器科)は「移植を受ける患者は免疫抑制剤を使うため免疫機能が低くなり、通常よりがんになりやすい。それなのに、がんの腎臓を移植するのは常識でもありえないし、医師として許されない。患者が希望したというが、希望の内容は医師の説明次第で変わってしまう。万波医師は患者との信頼関係を強調するが、これでは、ルールに基づいて行っている移植医療に対する、社会の信頼を失わせる。院長がこういう医療を黙認したなら、病院として社会性を欠く。金になるからやらせたのか、とさえ疑われかねない」と批判する。
毎日新聞 2006年11月4日 12時04分


患者が感謝しているからといって、今回の手続きでの医療を正当化することは出来ません。

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病気腎移植をどう考えるか
病気腎移植:患者団体が否定声明 ドナーの権利尊重に、不確かな情報をもとに、判断をくだすのは、...さんよりコメントを頂きました。病理医である堤教授のお手紙もコメントに記入して頂きました。 ...続きを見る
三余亭
2007/04/06 16:54

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内 容 ニックネーム/日時
マン波には透析医療に対するつよい嫌悪感が源流にある。わたしは かれのことをむかしから知っている。
mina138368@aol.com
ガイソウ
2006/11/22 12:04

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