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zoom RSS 「病気腎移植認めよ」という意見に反論する

<<   作成日時 : 2007/02/21 13:11   >>

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病気腎移植について、今までいろいろと書いてきましたが、学会としては原則禁止の方針のようです。朝日新聞からです。
病気腎移植は原則禁止、5学会が方針 「万波式」を否定

2007年02月19日05時59分

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる「病気腎」移植について、日本移植学会など関係5学会は、「原則禁止」の方針を打ち出すことを決めた。がんとネフローゼ症候群の患者からの移植は、免疫抑制下で「再発」の危険が高まるなどとして「絶対禁止」とし、それ以外についても例外的なケースを除いて禁止する方向で合意した。3月末の合同会議で、指針としての公表も検討する。個別症例ごとの検証結果は、同病院などに設けられた調査委員会と厚生労働省の調査班が、この方針に沿ってまとめる見通しだ。

 同病院と同市立宇和島病院、呉共済病院(広島県呉市)の3病院でこれまでに実施された病気腎移植は計42件。臓器提供者(ドナー)の病名の内訳は、がん(腎がん、尿管がん)16件▽ネフローゼ症候群8件▽動脈瘤(りゅう)6件▽尿管狭窄(きょうさく)4件▽その他(良性腫瘍(しゅよう)や腎臓結石など)8件で、がんとネフローゼで半数以上を占めている。

 5学会は病気腎を移植した場合の患者への影響などを医学的に検討。その結果、移植後の免疫抑制剤投与によって、移植患者の体内でがんが「再発」したり転移したりすると、急速に進行する恐れがあるとの見解でほぼ一致した。万波医師の執刀で94年ごろ、尿管がんだった患者の腎臓を移植された男性がその後、肺がんや肝臓がんを患って死亡。移植との因果関係は立証されていないものの、こうした実例の存在が重要視された。

 また、たんぱく尿が出るネフローゼ症候群については、内科的な治療法が発達していて、外科的な摘出の必要がないと判断した。

 脳死や心停止後の臓器移植の場合、がんや感染症の患者からの臓器提供は、厚労省の局長通知で禁じられているが、治療目的で摘出した腎臓を別の患者に移植する病気腎移植のようなケースを想定したルールはない。このため、がんの腎移植は外科医らでつくる日本泌尿器科学会が、ネフローゼについては内科医らも加入する日本腎臓学会が、それぞれ近く理事会を開き、腎移植の禁止を機関決定する見通し。

(中略)

 万波医師は18日、朝日新聞の取材に対し、「日本の医療界が禁止するのなら、病気腎移植をやめるしかない。ただ、支援してくれた患者らのことを思うと、医者としては今後も頑張らないといけない」と話した。


毎日新聞では、
病気腎移植:摘出・移植「7件不要」…調査合同会議で大勢

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)らによる病気腎移植問題で、日本移植学会など5学会と、摘出・移植の行われた各病院の調査委員会の合同会議が17日、大阪市内で開かれた。同病院で行われた11件の移植手術について各委員が発言し、移植・摘出とも各7件程度は必要がなく、残りのケースも疑問がある、などとする意見が大勢を占めた。同病院の専門委は18日に上部組織の同病院調査委に改めてこの結果を報告。合同会議は、この日や同病院の調査委の報告をもとに、3月末をめどに病気腎移植の是非について統一見解を出す予定。

 関係者によると、摘出のケースでは7件程度は投薬治療や一部切除などで対応が可能で、それ以外も必要がないか必要性に疑問があるという意見が多かったという。移植が行われた11件についても、7件程度は腎臓にがんなどがあり移植すべきでなく、残りは治療をしてドナー(臓器提供者)に戻すべきだったという意見が出たという。

 合同会議は移植学会の他、日本泌尿器科学会、日本透析医学会、日本病理学会、日本腎臓学会で構成。この日は、同病院以外に病気腎の摘出や移植が行われたほかの病院からも報告があった。厚生労働省は学会が出す予定の統一見解を受け、病気腎移植についての対応を決める方針。

 万波医師はこの日の会議で批判的な意見が出たことについて、「摘出の必要があると判断してやったことだが、必要がないと言われるのなら仕方がない。受け入れるしかない」と話している。

 学会から参加した腎移植医は会議後、「(万波医師らが)移植ありきで手術をやっていたことがはっきりした。移植医療を進めていくためには、学会として世間から見て納得できる見解を出す必要がある」と話した。一方、市立宇和島病院専門委の委員の一人は「対象症例は10年以上前のものもある。がんは小さくても腎臓を通常全摘するなど、当時の治療方法を現在の基準で検討するには限界があるものも多い。摘出・移植の可否を決めるには慎重さが必要だ」と述べた。【野田武、大場あい、加藤小夜】

毎日新聞 2007年2月17日 23時10分 (最終更新時間 2月18日 0時43分)


市立宇和島病院専門委の委員のひとりの方のおっしゃるように、10年以上も前の患者さんの治療はその当時の標準治療との比較で評価しないといけないと思います。しかし、だからといって現在もその当時のやり方でよいというわけではなく、治療法の改善によって、10年前は腎臓を摘出したけれども現在は腎臓を摘出しなくても良くなった、ということであれば、当時は疾患腎移植はありだったけれども現在は駄目という判断もできると思います。

万波医師の支援団体もあるらしく、病気腎移植を認めよとの意見のようです。次も朝日新聞からです。
病気腎移植「認めよ」 万波医師ら支援に6万人署名

2007年02月19日21時42分

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠泌尿器科部長らを支援し、病気腎移植への理解を求める市民グループ「移植への理解を求める会」が19日、厚生労働相に約6万1200人分の署名を添えた要望書を提出し、病気腎移植を治療の選択肢の一つとして認めることを求めた。

 この問題を巡っては、日本移植学会など関係5学会が、がんやネフローゼ症候群などの患者からの腎臓移植は、「再発」の危険が高まるなどとして原則禁止とする方針を打ち出すことを決めている。

 求める会はこの方針に「患者の意見に耳を貸さずに初めから病気腎移植にふたをしようという考え」と反発。病気腎移植によって多くの患者が救われていると強調し、要望書では万波氏らの医療活動に制限をしないこと、病気腎移植を生体腎移植などに次ぐ第三の道と認めることなどを要求している。



多くの患者が救われているといっても40名とちょっとですから、客観的に見れば多い数字ではありません。また、腎臓を提供する患者さんの意見が全く反映されていない状態で、提供を受ける患者の意見だけを聞くわけにもいきません。

しかし、私は病気腎移植が絶対だめという立場でもなく、場合によってはありだろうと思うのは前にも書いたとおりです。同じことを書きますが、
藤田保健衛生大学病院でのように腎血管性高血圧でも再発するのがいやだと腎臓戻すことが拒否されたなら、腎臓を摘出しても良いと思いますその患者さんの気持ちの問題であって、受け入れられないということであるなら、仕方の無いことだと思います。(数%でも再発の危険があるなら腎細胞癌の腎臓は戻さないでとってくれという患者さんの気持ちはよくわかります。)

その場合、藤田保健衛生大学病院のように公的ネットワークを利用し、倫理委員会で了承されていれば、その腎臓を移植に用いることは問題の無いことだと思います。というか、積極的に勧めるべきで、その意味では万波医師の言う第3の道でしょう。
再発する可能性が少しでもあるなら、腎臓を取ってくれという患者さんは当然いるでしょうし、そのような腎臓でも良いという方もいるでしょう。また、同じエントリーで書きましたが、
自然経過でもある程度は腎細胞癌となるわけですから、癌の腎臓を移植しても、自然経過とあまり変わらない発生率なら良い、医療として受け入れられると、とりあえず考えてみるわけです。
という考え方もありだと思います。

とはいえ、万波医師の行った移植に違和感を感じており、それは、前にも書きましたが、和田移植との類似性です。つまり、和田移植のようにドナーもレシピエントも同じ医師が治療しているという点です。

和田移植は、かなり悪い印象が私は持っています。レシピエントとなる患者の利益のために、ドナーとなった患者に対していい加減な医療をして不利益を与えた可能性があるということが、私としては医の倫理に非常に反すると思います。ドナーとなった患者のためにきちんと医療をした結果、力及ばず脳死となった場合の移植は医療として成立すると思いますが、レシピエントのためにきちんとした医療を行ったということに疑問がもたれないためには、ドナーとレシピエントの担当医療チームは別であるべきです。

患者団体もこの点について明確にして欲しいと思います。ドナーの不利益にならない限りで、という条件のもとで疾患腎移植を支持というふうに明記して欲しい。そうでなければ、ドナーを犠牲にしてまで自分の健康を取り戻すという風に受け取られかねません。

万波医師を支える病気腎移植を支持する患者団体は、ドナーとなる方にいい加減な医療をしても良いと考えていないということを前提に話をさせていただければ、きちんとした標準医療から外れた場合にのみチャンスのある病気腎移植を標準医療と同じような立場にせよと主張するよりは、脳死移植を増やすための啓蒙活動に力を入れられたほうが良いと思います。あるいは、死後の臓器提供は義務であるという考え方を広める活動も一考に価するでしょう。参考までに、腎臓移植待ちの患者を減らせるか?で重点的にとりあげた児玉聡氏の未発表の原稿がこちら

病気腎・疾患腎移植はリスク・ベネフィットのバランスがあまりよくなく、積極的に進めるというよりは緊急避難的医療の位置付けだと思います。透析という手段がある腎疾患の場合、緊急避難的医療としての疾患腎移植の生き残りはかなり難しいと思われ、これを積極的に第3の道として認めるよりは臓器提供を増やすよう、社会に働きかけられるほうが建設的だと思います。

尚、万波医師の問題になっていない腎移植を否定するものではなく、問題のない腎移植は今まで通りガンガンやっていただくことを希望しておりますし、この問題で今後の万波医師の通常の医療まで制限される必要は全くないと思っております。患者団体の主張が、普通の医療を行う万波医師を支持するし今後も処罰せず通常の医療は今までどおり続けさせて欲しい、ということであれば、特に異論はありません。

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病気腎移植25件すべての摘出症例「医学的に問題」・・・問題の本質はどこに?
http://news.livedoor.com/article/detail/3044826/  宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)らによる病気腎移植問題で、同医師が前に勤務した同市立宇和島病院で行った病気腎移植25件について医学的妥当性を検討していた同病院の調査委員会が、この2 ...続きを見る
こだわりセレブAmadeusの視点
2007/02/28 07:19
病気腎移植をどう考えるか
病気腎移植:患者団体が否定声明 ドナーの権利尊重に、不確かな情報をもとに、判断をくだすのは、...さんよりコメントを頂きました。病理医である堤教授のお手紙もコメントに記入して頂きました。 ...続きを見る
三余亭
2007/04/06 16:54

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
お邪魔します。
 結局この件は「所詮お偉いさん方には現場など分から
ない(なら日本全国にどれくらい移植が必要な患者が及
びその深刻度を知っているのか?)」「所詮健常者には
患者の気持ちや苦しみなど分からない(摘出された患者
の気持ちや苦しみは?)」になるだろう、間違いない。
 それから和田移植は「人工弁の手術をすれば治ったか
もしれない患者に対し心臓移植を強行した」とも聞いて
います。もしそうなら「レシピエントのためでもドナー
のためでもなく、医師自身の功名(日本初)のため」で
はないでしょうか。
ブロガー(志望)
2007/02/21 19:56
コメントありがとうございました。

>「所詮お偉いさん方には現場など分からない(なら日本全国にどれくらい移植が必要な患者が及びその深刻度を知っているのか?)」

多分、お偉いさんも、日本全国で移植を希望されている患者数はわかっていると思います(移植ネットワークのホームページで公開されています
http://www.jotnw.or.jp/datafile/index.html)。お偉いさんも、少し前まで診療していてでしょうから深刻度もある程度はわかると期待しています。

>「所詮健常者には患者の気持ちや苦しみなど分からない(摘出された患者の気持ちや苦しみは?)」

私のうつ病の経験から言っても、実際に病気になってみないとわからないことはありますから、それはある意味正しいとは思います。しかし、普通の人は、日常生活で他人の苦しみがわかる程度には、患者の気持ちを推測できるだろうと思います。それ以上に気持ちを分かれと言うのは、骨折した人間が「俺の感じているこの痛さをお前も感じろ」と言うのと同じで無理な要求なのかもしれないと、最近思っています。
三余亭
2007/02/22 01:37
続きですが、

>「レシピエントのためでもドナーのためでもなく、医師自身の功名(日本初)のため」ではないでしょうか。

私は、和田先生の動機がどのようなものであっても、その行為の評価とは関連させたくないと考えています。ですから、和田先生の動機が何であっても、和田移植の私の評価にとっては構いません。おっしゃるように功名心のためかもしれません。私が和田移植や万波移植が問題だと考えるのは、ドナーやレシピエントが正当に得るべき利益が損なわれた可能性があるという点です。和田移植も万波移植も、ドナーやレシピエントの医療や手続きにケチのつけようがなかったなら、日本初の心臓移植や第3の道の腎臓移植として称えたと思います。

万波医師は功名心や金銭には無関心の方のようですし、手術がうまく権威とは無関係な生き方に好感が持てますが、それと疾患腎移植の評価とは別の話だと考えています。まぁ、正直アンビバレンツなわけです。
三余亭
2007/02/22 01:38
三余亭さま、レスありがとうございます。

>なら日本全国にどれくらい移植が必要な患者が及びその深刻度を知っているのか?)

 自分としては万波医師とその支援者に対する「自分達
以外の"患者"をシカトするのか?」という意図だったの
ですが。

>ドナーやレシピエントが正当に得るべき利益が損なわれた可能性があるという点です。

 正しく「正論」ですが、それも万波医師とその支援者
からすれば「カルテだけを見て患者を見ようとしない態
度」になるのではないでしょうか。「特定の相手(対
象)にだけ思い入れ、その思い入れを絶対化する」のは
「(医師といった)専門家の態度」とは思えないのです
が。「共感しない(できない)相手は排除」にもなりか
ねませんし。
ブロガー(志望)
2007/02/22 21:49
私が誤解していた部分があったようです。

> 自分としては万波医師とその支援者に対する「自分達以外の"患者"をシカトするのか?」という意図だったのですが。

学会のお偉いさんが疾患腎移植を禁止するくせに、臓器提供が増えるような活動をしていない、その行為は透析を受けている患者の苦しみを「シカト」していることだ、という批判であれば、そのとおりだと思います。
三余亭
2007/02/23 14:17
> それも万波医師とその支援者からすれば「カルテだけを見て患者を見ようとしない態度」になるのではないでしょうか。

万波医師および支援者は、そういう風に受け取り、批判する可能性が高いと思います。

500文字しかかけないので次のコメントに続きます)
三余亭
2007/02/23 14:28
しかし、その「共感しない(できない)相手は排除」の姿勢は、万波医師がドナーとレシピエントの治療を一人で行っていたために生じる可能性があります。万波医師の支持グループからの批判が180度方向を変えて批判した支持グループに返っていきます。以下のような議論になります。

問題なのは、ドナーも万波医師が診ていたことです。ドナーを診る時にレシピエントのことを考えて、ドナーの治療をいい加減にしたなら(現実にそうしたと主張するわけではありません)、それはドナーにとっては「万波医師にきちんと診て貰えなかった」ということになってしまいます。万波医師が(人情に篤い医師だからこそ)、「特定の相手(対象)にだけ思い入れ、その思い入れを絶対化する」危険が潜在的にあるということが問題だと思うのです。目の前の患者よりは腎不全で長い付き合いのあの患者のほうが「共感できる」から、そちらの治療を優先しようという「共感できる相手優先」の論理(「共感しない(できない)相手は排除」の論理の変形版)は、医師が人間的であればあるほど、可能性としては常に考えなければなりません。
(続きます)
三余亭
2007/02/23 14:31
移植医療では、ドナーの発生は「場当たり的」です。交通事故、突然の病気等々。突然の出来事です。それゆえ、納得して臓器提供してもらうためにはドナーが最善の医療を受けたことが保証されるシステムでなければならないと思います。そうでなければ臓器移植が増えるわけがありません。ですから、提供臓器を増やすためにも、ドナーとレシピエントの治療は別であるべきであることが必要だと思います。

提供臓器が増えれば、万波医師の支持団体にも利益になると思います。

私個人としては学会の公式見解とは違って、後述の条件がつきますが「自然経過でもある程度は腎細胞癌となるわけですから、癌の腎臓を移植しても、自然経過とあまり変わらない発生率なら良い、医療として受け入れられる」という風に考える患者には癌の腎臓の移植しても良いと思います。そのためには
http://cuttlefish.at.webry.info/200611/article_3.html
で書いたように臨床試験で危険性の評価が必要ですが。その結果が出る前に一般医療として行うことは、強く非難したいと思います。
三余亭
2007/02/23 14:36

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