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zoom RSS 【つっこみ力 パオロ・マッツァリーノ著 ちくま新書】

<<   作成日時 : 2007/06/19 18:48   >>

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新書カバーの著者紹介によれば、「日本文化に造詣の深い、自称イタリア生まれの30代」の著者による「つっこみ力」を提案する新書。反社会学講座でおなじみの著者です。前に少し著者のことを触れましたね。そのときはノリツッコミでした。)

著者によると「つっこみ力」とは、
戯作家の私としましては、いっそのことメディアリタラシーを日本人向けに「つっこみ力」と改名したらどうかと、ご提案するのです。そう、漫才で使う、あのつっこみです。(p39)
聞いたことのある言葉にすればメディアリタラシーが一番近いようです。

メディアリタラシー、つまりメディアの言うことを批判的に考えて受け取ることが必要な場面もあるわけです。例えば、あるある大辞典の捏造とか、TBSの朝ズバでの不二家の報道とか。最近では牛乳は体に悪いという話がありましたが、あれだってそうです。WikiPediaできれいにまとめられていますが、反論の方に説得力を感じます。

メディアリタラシーという言葉・概念があるのに、なぜ「つっこみ力」をわざわざ持ち出すのか。それは
論理力こそが大事だろ、という御意見も根強いし、私もたしかにそれはある程度は必要だと思います。でも、論理力って秀才の自己満足に終わっていることが多くて、現実には意外と使えないものなんですね。
その証拠に、批判力や論理力やメディアリタラシーが、勝ったためしがないんです。(p54)
ということで、従来のメディアリタラシーに替わって「つっこみ力」。

批判力や論理力やメディアリタラシーが勝てなかった例として、血液型性格診断や買ってはいけない論争などが紹介されています。

買ってはいけない論争について著者は、
全体としてはメディアリタラシー的な姿勢が濃厚だったのは、批判本のほうでしょう。しかし、これまた結果は明白で、批判本が束になってかかっても、『買ってはいけない』を上回る部数を売ることはできませんでした。(p55)
とまとめられています。

どんなに論理的に正しい批判だろうが、正論だろうが、1人でも多くの人に伝わり、納得してもらわないことには、なんの力も持たないのも真理です。(p58)
まあ、そうです。

ひとは正しさだけでは興味を持ってくれません。人はその正しさをおもしろいと感じたときにのみ、反応してくれるのです。(p59)
正しいだけの批判力・論理力・メディアリタラシーに替わって「つっこみ力」ということのようです。おもしろさのために、「つっこみ力」。

著者はつっこみには次の2つの効果があると言います。
ツッコミには、「はい、いまボケましたよ」とボケたことをわかりやすくする効果もあります。(p52)
ボケだけでもおもしろいのに、そこにあえてつっこみを入れて、さらに場を盛り上げる。(p52)


というわけで、批判の替わりにつっこみ、メディアリタラシーの替わりにつっこみ。

なぜつっこみか。それは批判の対象となるものが”ボケ”だから。
血液型診断にせよ、ゲーム脳にせよ、ベストセラー理論を編み出した人たちは、おしなべて、たぐいまれな天然ぼけ力の持ち主です。正しさとか論理に縛られずにボケをかましたら、なぜか勝ち組みになってしまったのです。理性と常識にがんじがらめにされた凡人や秀才には、逆立ちしたって滝に打たれたって、そういうアイデアをひねり出すことはできません。(p102)


ボケに注目が集まったところで、それにつっこみを入れる。そこで面白くすることで批判力や論理力では関心を持ってもらえなかった正しさを伝える。そういう戦略なのでしょう。

「つっこみ力」には、おもしろさばかりでなく、わかりやすさ、権威にもつっこむ勇気が必要とのことです。わかりやすさについては、学問を例に出されて
わかりやすけりゃいいってもんじゃないだろ、なんて平気でいい放つ学者は、学生や一般人にわかってもらおうという愛がまるでないんです。(中略)それどころか、ちかごろじゃ、自分が説明ベタでシロウトに理解してもらえないのを棚に上げて、世間を見下す学者まであらわれました。(中略)まあ、たしかに、世間の人たちは、論理や理屈をいわれても、なかなか考えを変えようとはしません。世間の人たちが古い常識に凝り固まっているというのも、ある程度は事実です。それはたしかにありますけどね、でも、学者や専門家の説明があまりにもヘタで、わかってもらう努力もしていないせいもあるんじゃないですか。(p21)
わかりやすいほうが世間には広がるのは確かです。また、難しいことをわかりやすく理解できるのは楽しいものです。

権威に対しては、
権威に正面切って立ち向かうってのは、利口なやりかたとはいえません。潰されたり、お知りを叩かれたりする可能性も高いし、悪者か馬鹿者の汚名を着せられて、世間の支持を得られないこともあります。(p71-72)
ということで、権威のあるものに対する批判として「つっこみ力」が必要になるようです。批判にはできないが、つっこみが実現できる良いところは
笑いによるつっこみや風刺は、議論なんかよりよっぽど効果的な武器となります。(p73)
(メル・ブルックスの言葉として)暴君と闘うには、説教や雄弁でなく、嘲りのほうが効果がある。彼らは論争に強いから、討論で勝つことはできない。でも、永久に笑い飛ばすことはできる、と。(p74)
つっこみは全面攻撃ではなく、笑いによって相手の逃げ道を確保してやってるところも、高度で、かつ、人間味のある手段といえましょう。批判力や論理力をまともに使って攻撃してしまうと、たとえ自分が勝ったとしても、相手の逃げ道まで破壊してしまいかねず、どうしてもカドが立ちます。(p74)
周囲の人を愉しませて巻き込み、あわよくば味方につけるのが、つっこみ力の理想です。(p75)


その「つっこみ力」の実例として、経済学につっこみを入れています。成功したかどうかは、実際に読んで頂いて判断していただければ。

いい加減な統計をデッチあげるのは簡単だが、それに反駁するには何倍もの労力を必要とする。多勢に無勢のリサーチ・リタラシーは、息苦しいまでの消耗戦を強いられるのだ。 赤川学「人口減少社会における選択の自由と負担の公平」(p153)
と引用されているように、一度それらしい話が広まってしまえばそれを覆すのは容易ではありません。正面からの批判は、著者の言う通り、広がってしまった”ボケ”を覆すのには有効では無いのかもしれません。いくらか成功していると思えるのは空飛ぶスパゲッティ・モンスター教くらいでしょうか。

論理だけでの批判ではどうにもなりそうに無いとき、「つっこみ力」は有効だろうと思います。でも、面白くつっこめるようになるにはかなり練習が必要だろうと思いました。

私にはその才能はあまり無いかな。

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【生き抜くための数学入門 新井紀子著 理論社】
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なかなかいいこと言うね、謎のイタリア人 パオロ・マッツァリーノ著 「つっこみ力」
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2007/07/22 07:01
つっこみ力 (パオロ・マッツァリーノ著)
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2007/07/30 18:00

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
TBさせていただきました。

意外と真面目な提案をしていると感心してしまいました。
タウム
2007/07/22 06:59

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