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zoom RSS 【生き抜くための数学入門 新井紀子著 理論社】

<<   作成日時 : 2007/07/05 18:06   >>

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【つっこみ力】とか【論より詭弁】とかを取り上げました。前述の2冊では、理屈が通っていても、面白さがないとか不純な動機でモノを述べているとか、そういうことで意見を聞いてもらえない・認めてもらえないということがあることに重点がおかれているのだと思います。しかし、だからといって論理的でなくともよいということにはならないわけです。今回とりあげる【生き抜くための数学入門】は、論理的に考えることの重要性を認識させ、そのやり方を数学を通して紹介する本です。

数学を勉強することの意義が下のように書かれています。長くなりますけど、重要なところだと思いましたので、長々と引用します。

数学の授業に出ていると、何のことだかさっぱりわからないことがあるでしょう。当然です。だって、「ない」ものの話なんですから。
でも、問題を解いたり、解説を読んだりするうちに、「ああ、そういうことか」と思う経験もあるでしょう。そのとき、あなたは、現実には存在せず確認しようもないものを頭のなかに存在させ、そこにリアルを感じているはずなんです(p56)

見えない抽象的なものを見る方法は、禅や詩などほかにも方法があるでしょう。けれども、見えないものを見て、それを誤解なくどの文化に属する人とも共有する、ということになると、それは論理であり数学なのだろうと思います。(p57)

見えないものについて「だから」「どうして」「どうなる」か、を考える力は、毎日の暮らしにさほど重要ではないように見えます。だから、そんな訓練を進んでしようという人は多くないでしょう。けれども、見えないもの、たとえば、権利やリスクや未来について、「だから」「どうして」「どうなる」を考えることができなければ、この社会で幸せになれる確率は相当に低いのです。それは、現代社会が、情報量と選択肢の多い民主主義社会だからです。(p57)

そういう社会というのは、目に見えない概念について「だから」「どうして」「どうなる」を論理的に考え、比較検討できる個人を前提とした社会です。その能力を身につけておかないと、原因はわからないけどなんとなく不幸、という状態に陥ってしまうんです。見えないものについて「だから」「どうして」「どうなる」を論理的に考え、そこにリアルを感じるための別の目を獲得する、その訓練をする時間が、数学の時間なのです。(p58)

なので、数学が一見現実離れしていることや、数学を勉強しなくていいという理由にはなりません。将来の仕事のなかで数学を使わないことも、数学を勉強しない理由にはなりません。むしろ、現実離れしているからこそ、数学でしか獲得できない感覚を身につけることができるんです。(p58)
現実離れしているからこそ、数学。目に見えないものの話をするための、数学。なるほど。

小さな国の提案であっても、内容が論理的かつ合理的であれば、他の国も耳を傾けざるをえません。そうして、知恵と論理によって国際的に尊敬される地位を獲得している国はいくらでもあります。
国際社会だけでなく、私たちの社会でも同じことではないでしょうか。(p23)
そうだろうと思います。でも、普通の人にはあまり難しい言葉では聞いてもらえないのも事実で、聞いてもらうテクニックも必要なのだろうと思います。

数学を学ぶ意義はわかるものの、やっぱりちょっと、という方もいらっしゃるでしょうが、対話形式で書かれており、読むのに苦労はしません。考えることは必要ですが・・・(特に後半は)

まずは、かけ算とは何かについて、対話形式で話が進んでいきます。a×bの定義ですが、宇宙人にかけ算の定義を説明することになった眼鏡の男の子が「意味はab回たすこと(p31)」と言います。しかし、宇宙人から「5×3.4ハ5ヲ3.4回タスコトデスカ?3.4回タス、ッテ地球デハドウヤルンデスカ?」と聞き返されて、この定義だけでは不十分ということになります。小数や分数のかけ算のためには、自然数にしか使えない「回」ではなく、「個」を用いて考えることでかけ算が拡張されていきます。

負の数のかけ算についても、正の量しかないもの、負の量もあるものを考えて、かけ算を拡張していきます。他にも複素数や行列のかけ算があるということにも触れられ、
そこまでいったら、もう「何個分」では説明がつきません。そういうとき、数学者は、説明がつく・つかない、ではなくて、そこまで築いてきたかけ算の代表的な性質が壊れないようにしながら、かけ算を決めていくのです。(p41)


負の数のかけ算を最初に知ったのは金八先生のテレビだったと思います。まだ学校で負の数のかけ算を習う前のことでした。逆方向に向かうとか、速度がどうとか、そういうことで説明していたような気がします。つまずく人も多いわけで、わかりにくいものの一つだろうと思います。

さて、負の数のかけ算に関連して、面白いことが説明されていました。
式は、「それはそもそも何か」という定義、「答えをどうやって出すか」という計算、さらに「どんなことに使えるか・どんな意味があるか」という解釈の3つの要素でできています。
(中略)
定義をしたからといって、計算できるとはかぎりません。また、式の計算ができたからといって、自動的にその意味が発生する保証もないのです。(p47-48)
そのことが300×(-4)= −1200の式に当てはまる問題を考えることで示されていきます。「日常生活では、基準点からの距離や時間以外には、かける数が負になる状況はなかなか見つからないんですよ。(p51)」ということですから、負の数のかけ算がわかりにくいのはしょうがないのでしょう。

かけ算から始まっていますが、最後にはオイラーの等式が出てきてなかなかに気合いの入った本だと思います。読みやすいのですが、考えなければいけないところは考える必要がある本です。

なお、論理力をつけるために「ツッコミ」をする、ということが書かれていて、
「ひとりツッコミ」ができるようになると、自分のなかに客観性が生まれ、表現が正確になったいくんです。(p108)
「つっこみ力」の意外な効用でしょうか。

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