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zoom RSS 【ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く リサ・ランドール著 向山信治監訳 塩原通緒訳 NHK出版】

<<   作成日時 : 2007/09/07 00:56   >>

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ワープと言っても、宇宙戦艦ヤマトやSFで出てくる宇宙船の瞬間移動のワープではなくて、”ゆがむ”という意味のWarp。この世界は実は5次元で、普通の3次元空間と時間が加わった4次元に、さらに目に見えない5次元目が余剰次元として存在しているという仮説の解説。その5次元目が「歪曲している(p516)」ので、ワープする宇宙ということのようです。【NHK 未来への提言  異次元は存在する リサ・ランドール 若田光一著 NHK出版】でも5次元宇宙の紹介はされていたのですが、今回は600ページちょっとの分量で、専門的な解説がされています。だいぶ厚い本で、かつ最先端の物理学の解説ですから、読み通すのはきついかもしれません。しかし、章のはじまりに、その章で扱う話題の例え話が書かれており、これが意外にその話題の雰囲気を伝えてくれています。ですから、例え話を読んで、本文を読んで、また例え話を読むと、言いたい事が伝わってくる感じがします。第21章は、その例え話だけで構成されており、それまでに解説された余剰次元がある空間・宇宙の雰囲気を実にうまく伝えてくれています。

この本を書くことが決まったときに、まず思ったのは、自分がこの仕事に感じているわくわくする楽しさを伝えながら、なおかつ科学についての妥協をしない本を作りたいということだった。(p10)
と書かれていましたが、大変わくわくする感じが伝わってきました。理論を作り上げていくこと、わからないことを探求することの楽しさが伝わってきました。科学を仕事にできる幸せというのは、このようなところにあるのでしょう。

さて、階層性問題という物理学上の大問題があるそうで、わかりやすい言い方では重力がなぜこんなに弱いのか、ということなのだそうですが、詳しくは
電磁気力の強さ、弱い力の強さ、およびゲージポゾン(ゲージポゾンについては、こちら)の質量が、実験で測定されているとおりの値をとるものと単純に仮定するならば、すべては標準モデルの予言と合致する。しかし、このあと見るように、質量パラメーター(素粒子の質量を定めるウィークスケール質量)はとてもよく測定されてはいるが、物理学者がふつうに理論から考えて期待する質量に比べると、一京分の一、つまり16桁も低いのである。高エネルギー理論にもとづいて純理論的にウィークスケール質量の値を推定した物理学者なら、誰だってこれは(ひいてはすべての粒子の質量も)完全な誤りだと思うだろう。いったいどこからこんな質量が出てくるのか。この謎−すなわち階層性問題−は素粒子物理学の理解における大きな穴となっている。(p327-328)
とうことで、質量パラメーターとやらの理論と測定の間の差がひどいのが問題だそうです。

これに対する解決策が超対称性理論なのだそうですが、それにも問題があって、
超対称性は階層性問題を解決するかもしれないが、その対称性は完全ではありえない。もし完全なら、スーパーパートナーが標準モデルと同じ質量をもつわけだから、すでに実験で超対称性の証拠が見つかっているはずである。(中略)
いったん超対称性が破れると、「フレーバーを変える相互作用」が起こりうる。(中略)これは、自然界では非常に珍しい過程で、ごくまれにしか起こらない。しかし、超対称性の破れ理論のほとんどは、これが非常にひんぱんに、実験で確認されているよりもずっとひんぱんに起こると予言してしまう。(p370)
超対称性ってなんだと聞かれてもよくわからないのですが、でも、実験と理論があわないというなら理論の修正が必要だということまではわかります。

ということで、新しい理論というか修正したモデルというか、著者の余剰次元研究の成果とその後の発展が17章以降に解説されています。ブレーンとよばれる「高次元空間にある膜のような物体(p80)」がひも理論に含まれているようなのですが、そのブレーン上に粒子が隔離されるモデルを考えたようです。
私たちの最重要の研究課題は、隔離の概念を超対称性の破れに適用することだった。この考えは、超対称性の破れの原因となる粒子を標準モデルの粒子から隔離して、その両者間に望ましくない相互作用を起こさせないようにするというものだ。(p451)

この超対称性の破れのモデルには、2枚のブレーンがある。標準モデルの粒子が片方のブレーンにあり、超対称性を破る粒子はもう片方のブレーンに隔離されている。2つのブレーンはそれぞれ3つの空間次元をもち、5番目の時空次元、つまり4番目の空間次元で分けられている。(p452)


離れてはいても超対称性の破れの情報を標準モデルに伝えなくてはいけない、しかし、隔離していないときと同じように相互作用してはいけない、という制約があるようで、これを満たすために著者は工夫したようです。
私たちのモデルの成功の鍵は、超対称性の破れの情報を標準モデルの粒子に伝えることにより、スーパーパートナーに必要なだけの質量をあたえられる媒介粒子を見付けることにあった。だが、その媒介粒子にありえない相互作用を絶対に起こさせないようにする必要もあった。(p459)
グラビトンは、その理想的な候補のように思えた。(中略)私たちは、グラビトンの相互作用が、必要なスーパーパートナーの質量を生みだしながらも、クォークやレプトンのアイデンティティを乱すような−自然界で起こっていない−相互作用を生み出さないことを示すことができた。(p459-460)
そんなこんなで、ようやくラマンと私は最終結論にたどりついた。重力が超対称性の破れを伝えいていると仮定すると、隔離された超対称性の破れはおどろ区ほどすんなりと機能した。(p460)
2つのブレーンがあって、相互作用しないように粒子が隔離されており、相互作用はグラビトンを通してのみとする、とうまくいく。それは良いのですが、書名にあったワープ(歪曲した)というのは何に関係しているか?

それは、5番めの次元が専門的な意味で歪曲しているのだそうです。
この曲がりによって、空間のものさしと時間の刻み速度は全面的に修正され、5番めの次元のどの点においても違ってくる。歪曲した時空の曲がりを最も単純に表しているのが、グラビトンの確率関数の形状だ。グラビトンは重力を伝える粒子で、その確率関数は、空間のどの定点でグラビトンが見つかりやすいかを表す。重力の強さはこの関数に表されている。値が大きければ、その特定の点での重力の相互作用が強く、したがって重力も強くなる。(p517)


そんなワープした空間だと何がいいかというと、階層性問題が解決されるのだそうです。
重力の大きさは5番めの次元での位置に非常に強く依存するので、この歪曲した五次元世界の両端をなす二枚のブレーン上で感じられる重力の強さはとてつもなく異なる。重力が局所集中する最初のブレーンでは重力が強くなるが、標準モデルが置かれている二番めのブレーンではグラビトンの確率関数が無視できるぐらいに小さいので、このブレーンにとどめられている標準も出るの粒子とグラビトンとの相互作用は極めて弱い。(中略)ウィークブレーン(註:標準も出るの置かれているブレーン)上でのグラビトンの確率関数はきわめて小さく、もしこのシナリオが世界の正しい記述なら、その小ささこそ、私たちの世界の重力がこんなにも弱い原因である。(p518-519)


それに加えて、歪曲した幾何で階層性問題を解決するのに必要なのは、
ヒッグス粒子がウィークブレーン上にいることだけだ。(p534)
というととで、超対称性が必ずしも必要ないようなのです。

最後に、次元とは一体何だという疑問が書かれており、著者による解説を読むと、本当に次元て何のことなんだろうとわけがわからなくなってきます。まだ答えるべき疑問が残っているわけです。それも「次元って何だ」という、とことん突き詰めた問いです。

最先端の科学が問題を解決する様子を大変面白く伝えている本です。600ページはそれなりのボリュームがありますが、クォークとか聞いたことがあって興味があるなら、読んで損はないと思います。まぁ、今後の展開では余剰次元は否定されるかもしれないのだそうですが。こういう不安定な状態だからこそ面白い、というところもあります。

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2009/11/14 00:20

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