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zoom RSS 奈良の鑑定医の調書漏らしと医の倫理、マスコミの倫理

<<   作成日時 : 2007/10/23 00:20   >>

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奈良で自分の家に放火した少年がおりました。家族が死んだはずです。その事件で、少年の精神鑑定を行った医師が秘密漏示容疑で逮捕されました。問題となった本が出版されたあとの報道を見る限り、鑑定医が守秘義務違反を行ったということは明白だ、と考えていました。このような守秘義務違反を正当化できるような理由があったかどうか。それを考えたいと思います。

逮捕されたことに関する記事は最後の部分に載せておきます。

講談社はこちらに声明を出しました。一部抜粋します。
『僕はパパを殺すことに決めた』について

 弊社学芸図書出版部は本年5月21日、『僕はパパを殺すことに決めた』を刊行いたしました。本書に関連するとして奈良地方検察庁は「秘密漏示」を名目とする一連の捜査を続け、10月14日、事件を起こした少年の精神鑑定を担当した医師を逮捕するに至りました。
 私たちは今回の捜査の目的はメディアの取材活動を萎縮させることにあり、到底容認できるものではないと考えております。版元として取材源を明らかにすることはできませんが、本書に関連するとして身柄を拘束され、多大な苦痛を受けておられる鑑定医の方には心よりお詫び申し上げます。また、本書刊行の結果として、本来あってはならない出版・報道に対する権力の介入を引き起こしてしまった社会的責任を社として痛感しております。弊社では、本書出版の経緯、形態、意義について第三者を含む調査委員会を設けて詳細に検証を行い、その結果を改めて公表いたします。

(中略)

 本書については7月12日、東京法務局長より、非公開とされる少年審判の供述調書などを引用し、少年の心理、家族の私事などを詳細に記述することによって少年のプライバシーを侵害したとして、以下の勧告を受けております。
《本件書籍による更なる被害を防止するための適切な措置を講じるとともに、今後、このような人権侵害行為をすることのないよう、ここに勧告する》
 弊社はこの勧告を真摯に受けとめ、少年法の精神を尊重しながら今後も弊社の出版活動に反映させていく旨を公表しました。
 その後、9月14日、奈良地方検察庁により、本書に関連するとされる強制捜査が行われるという事態に至りました。著者の草薙氏の自宅ならびに所属事務所、少年の精神鑑定を担当した医師の自宅ならびに勤務先に家宅捜索が入り、以後、担当編集者をはじめ何人もの社員が奈良地検による任意の事情聴取を受けてきました。さらに9月28日には、この件に関連するとして京大教授の自宅ならびに研究室が家宅捜索を受け、任意の事情聴取が繰り返されました。
 一連の捜査は、「秘密漏示」に対するものとされています。「秘密漏示」とは、弁護士、医師や薬剤師といった高度な守秘義務を要する職業につく人が、正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らした場合に適用される罪状です。(強調は引用者)
 一方、私たちジャーナリズムに携わる者の使命は、国民の知る権利に応えるべく、真実を明らかにして報道することにあります。社会的意義、公益性のある報道のために、官公庁の不正や企業の組織的犯罪など、本来なら国民に広く開示しなければならないような重大な情報を得るため、守秘義務保持者らを含む情報源を取材するケースもあります。今回の事件にあたっても、真相を明らかにすることを目的として、著者を中心に取材活動を展開しました。一連の取材のなかで供述調書を含む捜査資料を入手したわけですが、この取材活動は正当な行為であったと考えています。
 弊社および草薙氏は奈良地検の事情聴取に対して、調書の入手に関しては正当な取材行為であったことを主張し、情報源秘匿の原則を守りながら可能な限りの説明を任意で行ってきました。現在も捜査は続いており、弊社としては出版社として守るべき原則にしたがって対応してまいります。
(以下略)

2007年10月17日
講談社


講談社の言い分があるのでしょうが、鑑定医が行った行為が正当化されるかどうか、難しいと思います。守秘義務はヒポクラテスの誓いにもあり、医師の基本的な義務です。

守秘義務違反を犯してもよい、という例外的な状況の一つに、医者が患者との話の中で特定の人間を殺すと明言している場合があったと思います。何かの医の倫理の本で読んだ実際の事件だった気がするのですが、本棚を探しても見つかりません。ネットで見つかる資料では、こちらのPDFの8ページ目、4.患者が既知の人に危害を及ぼす、の項目に書かれている事件だと思うのですが。(このPDFには他にもいろいろな状況の解説があり、守秘義務についての良い解説になっています。)

守秘義務を破っていい状況というのは、そうそうあるものではありません。守秘義務を破らないと誰かの命が危ない、社会が危ない、そのような場合に限定されています。

まあ、さほどに守秘義務というのは基本的な義務であり、鑑定医が調書を見せて、そのうえ迂闊にも写真まで撮られていたというのは、医師として失格。どのような理由があれ、失格。守秘義務は医師として、何も考えずとも守ってしまうほどに染みついている義務であるべきで、それをこの程度のことで破ってはいけない、と思います。

最後に引用する朝日新聞の記事にあるように「長男が殺人者という世間の誤解を解きたかった。」と言ってますが、守秘義務違反を犯して誰かの生命に関わるほどの利益を見つけられるのでしょうか?長男に対する誤解を解いたところで誰かの生命が救われるわけではありませんから無理でしょう。

マスコミにはマスコミの言い分があるのかもしれませんが、今回は守秘義務違反をしても誰の命も救えません。というわけで、医療における守秘義務を理解しない草薙厚子氏と講談社の言い分は却下。


最後に鑑定医が逮捕された件に関する朝日新聞の記事です。ほんとはどこか省略するべきなんだろうけど、ちょうどいいところがなかったので・・・・
調書見せた容疑の精神科医「世間の誤解を解きたかった」
2007年10月18日

 奈良県田原本町の医師宅放火殺人事件を題材にした本の出版問題で、長男(17)らの供述調書を著者に見せたとして奈良地検に秘密漏示容疑で逮捕された精神鑑定医の崎浜盛三医師(49)が、何らかの形で取材内容が公表されることを認識していたことが分かった。弁護人の堀和幸弁護士らが18日、記者会見で明らかにした。動機について「長男が殺人者という世間の誤解を解きたかった。長男のためにやった」と話しているという。金品授受は一切否定している。

 弁護士によると、崎浜医師は本の著者でフリージャーナリスト草薙厚子氏(43)の要請に応じ、昨年9〜10月に数回、京都市内の自宅などで面会し、10月に供述調書などの資料を見せたと認めている。法に触れることは知っていたという。

 崎浜医師は公表を認識していたが、具体的な出版方法は聞いていなかった。調書をコピーされたり、写真に撮られたりすることは考えておらず、「本を読んで詳細に引用されているのに驚いた。予想の範囲外だった」と話しているという。草薙氏や出版社にだまされた意識はないという。

 調書を見せた当時、長男が母と弟妹の計3人を焼死させたことについて、少年審判で殺意の有無が争点になっていた。崎浜医師は鑑定で、長男は自分の興味・関心に執着する広汎性発達障害であり、犯行時は幼少時から暴力を受けていた父親から逃げることに病的に集中した結果、非行に及んだ「不幸な事件」と結論づけていた。

 草薙氏の依頼に応じた理由を「長男に明確な殺意があったわけではないことを社会に訴え、広汎性発達障害への世間の誤解もなくしたかった」と話しているという。

 堀弁護士は「法的に許されないことはわかっているが、それなりの公の目的でやったという印象だ」と話した。

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内 容 ニックネーム/日時
崎浜医師が守秘義務を破ったことは違反です。しかし、それを越えて伝えたかった真実が、崎浜医師にはあったのではないでしょうか。少年犯罪は非公開です。ゆえに、我々一般市民は、裁判の過程で明かされる事件の真実を知ることができません。少年犯罪では、社会環境から病に陥る子どもが事件を犯すケースも多く、奈良の少年も、そのケースだと医師は鑑定していました。社会の被害者である少年が、社会で犯罪を犯して被害者をつくる…。そこに崎浜医師の訴えたいところがあったのではないでしょうか。今回の事件の少年を救うためでなく、不幸な事件をこれ以上繰り返さないため、現場からの訴えだった、と思います。草薙氏に疑問を持ちました。情報処理の手法、取材元を守れない無責任さは、マスコミ人として恥ずべき姿勢です。
崎浜医師
2007/11/28 19:08

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