三余亭

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zoom RSS 【子供にいちばん教えたいこと レイフ・エスキス著 管靖彦訳 草思社】

<<   作成日時 : 2008/01/26 11:50   >>

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帯によれば、「学力を上げ、本好きにし、人間的に大きく成長させる、いまアメリカで最も有名な教師のノウハウを公開!」とあります。他に、「貧しい移民の子ばかりのクラスを受け持ち、医師や科学者を輩出するすごい先生がいる!」とも書いてあります。凄いですね。さて、どんな教育をしていらっしゃるのでしょうか?

第I部は「教室を第二のわが家に」と題して、2章が含まれています。第1章は「安心して学べる場所をつくる」。教室運営にあたっては、生徒を恐怖で管理するのではなく、生徒との信頼関係が大切であることが書かれています。第2章は「レベル6の倫理を目指す」と題されていて、生徒たちが人間として成長する目標について書かれています。

「レベル6の倫理を目指す」について少し詳しく。レベル6の倫理というのは、ローレンス・コールバーグなる人物の説のようです。
子供たちがどんなときにも行儀良くふるまう教室の環境を育もうと、わたしはさまざまな方法を試した。(中略)大好きな本『アラバマ物語』を授業で取り上げようとしたのがきっかけだった。その小説に出てくる登場人物たちを、ローレンス・コールバーグの「倫理的発達の六段解説」に照らして分析するスタディ・ガイドを読んでいた。そしてひらめいたのだ。「これだ!この六段解説はシンプルで理解しやすいし、何より、わたしが子どもたちに学んでもらいたいことを教えるのに完璧に適用できる」と。(P32-33)

その六段階は
「次の27個のルールに従えば、きっと成功します」と教える単純なアプローチと違い、六段階の発達は一生の努力を要するのだ。(p33)
という、学校に通っている間だけのものではなく、社会に出てからも目指すべきものです。具体的に六段階は、
レベル1 面倒を避けたい(かれらは怒られたくないから宿題をする(p34)、というレベルです。)
レベル2 報酬が欲しい(これが問題なのは、「正しい行動は望まれるものであって、報われるものではないことを、子供に示す必要がある。(p36)」ので)
レベル3 誰かを喜ばせたい(そんなに問題ないかと思うのですが、『「きみたちはわたしのために歯をみがくのか?」「そんなことはバカげているのはわかるだろう?」(p39)』何かをするときは人のためばかりではない、ということのようです。)
レベル4 ルールに従う(ルールがすべてではないことを教える必要がある。ルールを踏み越えて前進しなければならないときもあるということを。(p42)。キング牧師とかガンジーが例に出されています。)
レベル5 他人を思いやる(このレベルまで達すれば相当だと思いますが。「人を理解しようとしても、その人の立場に立って物事を考えてみるまでは、本当には理解できないんだよ・・・その人の皮膚の内側に入り込んで歩き回ってみるまではね」(p43)ということを理解して、他人を思いやることができるレベル。でも著者は「もっと向上できると思っている。(p44)」)
レベル6 個人的な行動規範をもち、それに従う(真昼の決闘に登場する保安官ウィル・ケインが例に出て、「ケインは全員に見放されて、命の危険にさらされても、自分の規範を守りつづける。(p46)」これは大人でも難しいレベルです。)
私としては、小学生くらいであればレベル3とか4とかであれば十分と思うのですが、著者は目標を高く設定しているようです。
わたしたちは子どもたちに多くを望み、最善を尽くす。子どもたちの行動に合わせてバーを引き下げるわけにはいかない。(p48)
難しいということは、挑戦すべきでないということではない。(p44)
実際にレベル6の段階に達する生徒もいるようで、紹介されています。

第2部以降に読書好きにさせるにはどうするか、文章力をどうつけるか、算数をできるようにさせるにはどうするか、テスト対策、等々具体的なことが書かれています。テスト対策を手抜きしないのが、理想だけに終わらない教育方法の解説として説得力があります。

第3部では、「もっと上を目指そう」と題して問題解決の方法、映画を成長の糧にすること、街に出ること、奉仕活動などが触れられています。著者は生徒を集めて毎年シェイクスピアの劇を発表している用なのですが、それに関連したことも書かれています。ちなみに、それに関連したHPはこちら。その中のOur missionには
Our Mission

The Hobart Shakespeareans is a public school classroom designed to improve the quality of life for economically disadvantaged children. Working together with staff, parents, and our community, we are determined to establish a level playing field to give each child the equal opportunity promised in the Constitution. Through disciplined study and high expectations, the children acquire the knowledge, skills, and grace necessary to earn their share of the American Dream.
(強調は三余亭)
課外活動の意義はこんなところにあるのですね。

熱心な教師の素晴らしい実践を解説している本です。しかし、すべての教師にこの水準を求めるというのは無理だ、とも思いました。教師を支えるシステムが無いことには、ここに書かれている教育を実現することは無理でしょう。そして、学校摩訶背にせずに、書かれていることの一部は家庭で行う必要もあるのでしょう。そしてそのような教育を浮けたとしても、
(以前の教え子が)ある午後、発煙弾をもって学校にやってきたのだ。廊下を駆け抜け、いくつかの教室に発煙弾を投げ込み、学校の備品を破壊した。教師の車にも発煙弾をしかけ、わたしの車が最初に被害にあった。それからの数週間、かれらがどうしてそんなに短期間で道を踏み外したのかを理解しようとして、よく眠れない日がつづいた。(p47)
といったことが起き得ます。

教育とは大変難しいことであるということがわかりました。しかし、喜びも大きいものだということもわかりました。

著者のRafe Esquith氏は、Wikipediaの英語版に項目が設けられていました。短いですが。興味のある方はどうぞ。

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【学力を育てる 志水宏吉著 岩波新書 2005年】
1歳9ヶ月の子供の子育ての最中です。今すぐに関係があるわけではないのですが、昨今の教育に関する話題は気になります。特に学力低下がマスメディアで話題になってからは、これが気になる話題の一つです。で、欲張りすぎるニッポンの教育とか、子供にいちばん教えたいこととか、気になって読んでみたわけです。 ...続きを見る
三余亭
2008/03/15 07:07

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