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zoom RSS 医師の利益相反 conflict of interest

<<   作成日時 : 2008/04/02 23:15   >>

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癌の治療法の一つに放射線治療があります。最近は強度変調放射線治療というのがあるそうで、今月から診療報酬として加算されるようになっているようです。その放射線治療の医師の利益相反について。読売のサイトからです。

放射線の治療装置、名古屋市大教授が指針医と販社役員兼務

 「トモセラピー」と呼ばれる最新の放射線治療装置について、治療指針を作成する日本放射線腫瘍(しゅよう)学会の研究の代表者を務める芝本雄太・名古屋市立大教授(量子放射線医学)が、この装置の輸入・販売会社の取締役を兼業していることが明らかになった。中立、公正な治療指針が作れるのか疑問視する声も出ており、学会は医師と企業の関係などについてルール作りを進めるとしている。

 治療指針は、トモセラピーの照射方法や対象疾患などを検討するため、日本放射線腫瘍学会の課題研究として、名古屋市大など6病院共同で進められ、今秋にも公表される予定。

 芝本教授は2005年、装置を輸入、販売する「ハイアート社」(本社・東京)の取締役に就任した。05年に同社から120万円の寄付金を受けたほか、会社主催の講演会の座長を年3回ほど務め、1回5万円程度の講演料を受け取り、会議のため同社関係者と飲食店に行くことがあるという。

 役員兼業について、芝本教授は「大学には、規定に基づき届け出ている。届け出では、報酬を年30万円と記載したが、実際には受け取っていない。役員になったのは、『この最先端治療装置の第一人者』とアピールできるからで、営利目的ではない」と説明している。

 前国立がんセンター中央病院放射線治療部長の池田恢(ひろし)・堺市立堺病院副院長は「業者と関連の深い医師がまとめる指針は、お手盛りとの疑念を招く。治療対象者を増やそうと、治療効果などへの判断が甘くなるのではないか」と懸念する。芝本教授は「科学者として判断が甘くなることはない」と主張している。

 日本癌(がん)治療学会など一部の学会は昨年、「がん臨床研究の責任者は、研究に関係する企業や営利団体の役員に就くのは避けるべきだ」との指針をまとめたが、日本放射線腫瘍学会にはそうした規定はない。

 日本放射線腫瘍学会長の晴山雅人・札幌医大教授の話「学会として、倫理委員会を作り、(医師と企業と金銭関係などの)利益相反のルール作りを検討している」
(2008年4月2日03時03分 読売新聞)


放射線腫瘍学会も早く利益相反のルールを作らないといけないですね。放射線治療は今回の診療報酬改定で外来加算がついたようですし、がん対策基本法ができてから追い風が吹いているようです。しかし、いい加減な治療指針を作っていては、放射線治療医は信頼できないということになってしまいます。診療報酬の点数を下げるいい口実になるかもしれません。

さて、芝本教授が会社のために働き、そして医学の発展のためにも働く、この2つのことは両立するのでしょうか。

会社の利益と医学の発展が同時に達成されるときは(つまり、新装置が従来の装置より良好な治療成績なら)、患者さんへの害はありません。しかし、その装置による治療効果が従来の装置と同等か悪かったとしたなら、問題が生じます。会社のために働いた場合、つまり装置の治療効果は良好と主張した場合は、従来の装置を買い換えた金銭負担を医療機関に強いるわけです。万が一、副作用が強かったり(このReviewのabstractを読む限りは2次発癌の危険の評価がまだ必要なようですし)治療成績が悪かった場合は、患者さんが直接の健康被害を被る危険もあるわけです。逆に、正直に治療効果は同等と発表すれば、それは会社への損害につながります。2つの目的が同時に達成できない場合には、患者さんか会社か、どちらかが不利益を被るわけです。そういう状態になったときに果して患者さんを優先させることができるのか、というところが問題なわけです。

もちろん、医師であるのですから、患者さんの利益を優先させることを期待しているわけですが、人間ですから魔が差すこともあるかもしれません。そんなことはないと本人が言って、事実その通りであったとしても、周囲から患者さんの利益を優先させていないのではないかと疑問を持たれ時点で研究結果まで疑問を持たれてしまいます。せっかくの時間と費用をかけた研究が全く信用できないとされてしまう可能性があるのです。ですから、”日本癌(がん)治療学会など一部の学会は昨年、「がん臨床研究の責任者は、研究に関係する企業や営利団体の役員に就くのは避けるべきだ」との指針をまとめた”わけです。

芝本教授がおっしゃる通り“科学者としての判断は狂わない”なら、会社の取締役というよりもお目付け役が適任でしょう。それが目的なら取締役にならなくともできるわけです。研究の責任者であるだけで十分。誤解を受けるような立場を退くべきです。まぁ、もう遅いのかもしれませんが。(こちらの指針では、無償の科学的顧問ならよいようですし、当該研究上必要不可欠な人材なら役員であってもよいようですが、かなりの例外と考えてよいでしょう。)

今秋に研究を公表されるとのことですが、放射線腫瘍学会のホームページを見ると、こちらでしょうか。具体的な研究計画はわかりませんでした。その研究が、二重盲検化した研究ならまだしも、どの治療を受けたか患者も医師もわかる研究計画なら、研究責任者が会社の取締役である以上、その装置が本当に他の装置よりすぐれているか判断するための材料として信頼性ゼロです。まさしく広告。

ちなみに、強度変調放射線治療はトモセラピーという装置でなくてもできるようです(この記事の写真はトモセラピーではないようですし、こちらをみると京都大学にはトモセラピーは入っていないようですし。)。その装置ではなければならない臨床上明らかな利点というものをはっきりさせないといけないですね。

研究結果の公表が楽しみですね。トモセラピーの治療指針というよりは強度変調放射線治療の指針と読み替えればいいのかな。

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営利企業の役員を兼務する医師の作った治療指針を信用しろ、というのか!まったく患者を馬鹿にした話だ。学会は研究班をいったん解散し、中立公正な委員を選んで出直すべきだ。
ガンマナイフで、家族の顔も分からなくなった患者の話を聞いたことがある。「民間病院では、高価な装置の原価償却のため患者集めに必死になっている」そうだ。トモセラピーでも同じことを繰り返す危惧がある。放射線治療業界ではガンマナイフだけでなく、サイバーナイフや、ノバリス、トモセラピー、重粒子線治療など“先端治療”を次々に生み出している。「切らないがん治療」「癌組織だけをピンポイント攻撃」「効果は高く副作用は少ない」と盛んに宣伝している。
だが、治療後の晩期障害には口をつぐんでいる。放射線治療の後遺症で、一生車いす生活になった患者もいるのだ。トモセラピーは1台約5憶円とか。医師は「病院の経営が苦しい」とか「医師不足」と最近主張している。その主張は理解できる部分があるが、一方で、高価な放射線治療装置を購入している病院がある。いったいどうなっているのか?

毎朝太郎
2008/04/03 00:26
ごもっとも。
三余亭
2008/04/08 06:50
>会議のため同社関係者と飲食店に行くことがあるという

会議と飲食って関係があるの??
よくわからないんだけど
毎日太郎
2008/04/10 23:05
会議と飲食は直接関係はないというのが普通の感覚でしょう。
善意で解釈すれば、食事の時間しか話し合う時間がなかった、ということでしょうか。
実情は、報酬代わりなのかもしれないですけど。
三余亭
2008/04/11 07:01
なるほど

報酬代わりの食事。

ってことはこれってヤバイような・・・
毎日太郎
2008/04/11 23:52
あくまでも推測の範囲なので。

善意での解釈のとおり、時間が食事の時しか無かった、という可能性もあるわけです。

新聞記事以上の情報がないのでわかりませんが、食事代をどちらが支払ったかが問題となるのではないでしょうか。

おごってもらっていれば、ちょいと問題になるかもしれません。報酬代わりとみなされる可能性はあると思います。でも自腹なら時間が空いて無かったということと、報酬をもらっていないという言葉が信用できるわけです。

そこまでは新聞記者も調べてはいないのでしょうけど。
三余亭
2008/04/12 00:10

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