三余亭

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zoom RSS 福島県立大野病院事件の判決要旨から

<<   作成日時 : 2008/08/21 02:15   >>

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福島県立大野病院事件の判決が出ました。お亡くなりになった方にお悔やみ申し上げます。

判決の感想など書いてみます。

判決要旨の引用です。朝日からです。

 医師に医療措置上の行為義務を負わせ、その義務に反した者には刑罰を科する基準となり得る医学的準則は、臨床に携わる医師がその場面に直面した場合、ほとんどの者がその基準に従った医療措置を講じているといえる程度の一般性、通有性がなければならない。なぜなら、このように理解しなければ、医療措置と一部の医学書に記載されている内容に齟齬(そご)があるような場合に、医師は容易、迅速に治療法の選択ができなくなり、医療現場に混乱をもたらすことになり、刑罰が科される基準が不明確となるからだ。

 この点について、検察官は一部の医学書やC医師の鑑定に依拠した準則を主張しているが、これが医師らに広く認識され、その準則に則した臨床例が多く存在するといった点に関する立証はされていない。

 また、医療行為が患者の生命や身体に対する危険性があることは自明だし、そもそも医療行為の結果を正確に予測することは困難だ。医療行為を中止する義務があるとするためには、検察官が、当該行為が危険があるということだけでなく、当該行為を中止しない場合の危険性を具体的に明らかにしたうえで、より適切な方法が他にあることを立証しなければならず、このような立証を具体的に行うためには少なくとも相当数の根拠となる臨床症例の提示が必要不可欠だといえる。 (強調は三余亭)


毎日のサイトを見ますと、”福島地検の村上満男次席検事は「立証が不十分だったという以外、なぜ無罪なのかと思うほど事実関係について主張が認められた。(以下略)”ということなので、事実関係は検察の主張通りだが無罪、というのが今回の判決。

以前に取り上げた、【医療過誤・医療事故の予防と対策 病・医院の法的リスクマネジメント 森山満著 中央経済社】では、こう書きました。

医療過誤 医療行為(問診・検査等による診断行為、投薬・手術等の治療行為)上のミスによって、患者に何らかの障害を与えるもの。

医療事故 医療行為実施の過程でのヒューマンエラーに基づくアクシデント。
(注:一般的な定義とは異なり森山氏による定義)


補足として、「医療過誤」は「診断上のミスや治療上のミスは、主として一定レベルの医療水準(平均的な医師の平均的な専門的技量)を前提として、その水準(技量)に達した医学的判断に基づく医療行為がなされたかが問題となる(いわゆる専門家責任の問題)。(p4)」そして、「「医療事故」とは、たとえば看護婦が投薬の種類や量を誤る、(中略)、手術の際に執刀医が体内に遺物を残留する、(中略)といったような人間のエラー(ヒューマンエラー)に基づく「アクシデント」をいう。この場面では、医療水準(平均的な医師の平均的な専門的技量)に基づく医学的判断ということは基本的に問題とならずに、医療というある意味では人体に対して危険な業務に従事する「医療従事者としての水準」が問題となるに過ぎない。(p4)」ということです。

著者によれば、この独自の区別の「1つの実益は、医療過誤は、原則として刑事責任が問われないのに対して、医療事故は、原則として医療事故に関与した関係者が刑法上の業務上過失致傷罪ないしは業務上過失致死罪として処罰されうるという点にある。(p5)」


以上を踏まえれば、そもそも今回の件は刑事罰を問うようなものではなかった、ということになります。

医療水準ということから考えても、水準に達した医療であった、という判断だと思います。この判断のままだと民事責任も無いのかな。

判決要旨の一部を強調しましたが、”相当数の根拠となる臨床症例”が無いことには別の治療が適切であったとするわけにはいかないとの判断でした。”相当数”ってどれくらいなんだろうと思いますが、それは疾患の頻度によって変わってくるのでしょう。癌のような比較的かかる人の多い疾患では、1-2例の症例報告レベルしか無い段階で一般ではまだ行われていないことであれば、相当数の根拠となる臨床症例とはならないと思いますが。日本で10例しかいない、というような疾患の場合は1-2例の症例報告でも相当数となるんでしょう。


Evidence based medicine (EBM)
ということが言われて久しいですが、訴訟対策のためにもEBMは必要となってきているのでしょう。

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