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zoom RSS 【その言い方が人を怒らせる ―ことばの危機管理術 加藤重広著 ちくま新書】

<<   作成日時 : 2009/12/13 00:50   >>

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ちょっとしたものの言い方が、カチンとくることってあります。最近では見学のお願いの手紙に「僕たち的には」と書いてきた中学生がいて、「それがお願いの文章か!教師は何をチェックしとる!」と頭にきました。大人に出す文章じゃないです。あとは、4月の新卒の季節、新人の口の利き方ですね。社会人の口の利き方じゃないのが多いです。3ヶ月程度でしっかりしてきますが。

人とコミュニケーションしなくてよい仕事、人を怒らせても大丈夫な仕事ってかなり限られていると思います(というか全然思い浮かばないのだけれど、こう言ったのには訳があって)。人を怒らせない言葉遣いはどんな人も必要な技術ではないでしょうか。

本書ではなぜ人を怒らせる言い方になるのかを、日本語(あるいは日本人)の特性から分析しています。おもしろいです。敬語の使い方のハウツー本とは違って、原則から説明されているところがよいです。

日本語(あるいは日本人は)はどんな言語か、著者によれば、
簡単に言えば、他人の心の中など本人以外に分からないようなことを断定的に述べるような「越権行為」に日本語は厳しい言語なのである。(p134)

「場の空気」は、特定の集団や地域や文化ごとに決まっている常識のようなものであり、その決まりを知らないものには分からないことが多い。(p144)

日本語を使う社会では、自信過剰な言動よりも自信なさそうな言動の方が受け入れられやすく、謙虚な姿勢が読み取れる方が支持されやすいと言えるだろう。(p159)

日本語を用いる共同体である日本の社会は、みずからの分をわきまえて発言することが重要であり、他人の持ち分に出しゃばって割り込んでいくような発話を許さないのである。(p161)

相手が優先的に握っている情報とは、いわば相手が支配下に置いている所有物のようなものである。それを断りなしに自分のもののように扱うわけにはいかない。(p163)
相手と自分が、ある情報についてどちらが優位な立場にあるかを考えて言い方を決めるのが日本語の使い方における重要な原理になっているのだ。(p166)

「有能だと評価されたい、友好的だと思われたい、いい人だと思ってほしい」という願望を「おもての願望」とすると、人間には「うらの願望」もあると丁寧さの原理では考える。(中略)「干渉されたくない、放っておいてほしい、指図されたくない」という気持ちのことである。(p197)


「僕たち的」や新人の言葉遣いは「場の空気」と違うからカチンときたんですねぇ。それが仕事場で使う言葉か?という怒りは場の空気を読めてないだろうという怒りだったわけです。

「私ってハーブ大好き人間じゃないですか(p202)」がカチンとくるのも(この言い方、私カチンときます)、「そもそも知らない情報なので否定も肯定もできないのに、肯定することを求められ、否定しようにも否定の理由を持ち合わせていないという状況になる。きわめて自由の度合いが低いから、負のメンツ(うらの願望)が圧迫され、脅かされる。これが、不愉快に感じる原因の正体である。(p203)」全くその通り、知るか!と答えたくなります。

人を怒らせない具体的な方法も書かれていて役に立つと思うのだけれど、単なるハウツー本ではなく、日本語を使うときにどのような意識が働いているのかということが説明されているところが気に入りました。こういう原則を教えてもらえれば、応用が利くと思えるところがいいですね。

日本語について知らなかったことがありました。昔の日本語は文を単文として切る意識が希薄であったこと、明治以降句読点をきちんと打つようになったこと。古典の文庫本を読んでも句読点は打ってありますからねぇ、正直知らなかったです。恥ずかしい。元々日本語は文章を閉じないで続けていくものであったと、そういうことが昔の日本人の好みであったと、そういうことのようです。

”他人の領域を侵さない”というのが日本語を使う人間の意識であるということに注意して、人を怒らせずに仕事をしていこうと思います。勉強になりました。

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