三余亭

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zoom RSS つぶやき感想【医学と仮説 原因と結果の科学を考える 津田敏秀著 岩波科学ライブラリー184】

<<   作成日時 : 2011/11/09 00:57   >>

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面白そうなので買ってみました。
医学における原因と結果の哲学、という感じ。
思うところを思うままにTwitterでつぶやいたので、後半に掲載します(雑だなと思うところもありますが、そのままにしてあります)。

疫学を専門とする著者が、疫学を通して医学における因果関係について考察した本です。
疫学についてはこちら。疫学における因果関係が医学における因果関係の基本だ、ということを主張していると読みました。

疫学はある種の因果関係を扱います。人間のとったある行動と疾患の関連を明らかにできます。しかし、分子的メカニズムは疫学では明らかにはできません。分子的メカニズムを明らかにしないと因果関係の証明にならないと言う医学者が居るとのことですが、自分はそこまで極端なことは言いません。疫学的に因果関係が証明される(人間の行動と疾患の関連が明らかにされる)ことは分子的メカニズムの解明とは無関係に重要なことだと思います。

しかし、本書で要素還元主義とされている考え方、つまり細胞・分子レベルでのメカニズムの解明は「医学において必ずしも必要ではない(p37)」と書かれていますが、最近の癌治療の進歩はこの要素還元主義的方法論によるものが多いのも事実です。分子標的薬がその代表ですが、その有効性は目を見張るものがあります。

ですから、自分としては疫学の因果関係も重要であるが、要素還元主義による因果関係の解明も重要である、という立場を取りたいと思います。疫学を重要視する程度が著者よりも低い立場です。

ただ、著者の言いたいことはよく分かります。「他の学部でできることは医学部でやらなくてもいいんじゃない(かなりの要約ですが・・・)」という意見がでるのもよく分かります。臨床系の人なのに基礎研究の業績の方が多い場合、八百屋が魚を売ってるような感じで変だと思うのは自分だけでしょうか。臨床研究だって立派な医学研究です。


Mon, Nov 07


  • 04:55  「医学と仮説 津田敏秀著 岩波科学ライブラリー」購入。医学における原因と結果の哲学を目指した本だ、と思う。

  • 04:57  疫学を専門とする著者は、「メカニズムが分かっていない」という言葉が嫌いなようす。分子生物学的背景がはっきりしないと原因とみなさない、という態度を批判している。メカニズムがはっきりしなくても、対策を立てられるのが疫学の良いところ。

  • 05:01  ただ、対策は立てられるが原因を特定できるかと言われると、そこには議論が生じると思われる。スノーのコレラが有名だが、スノーはコレラ菌を発見してそれがコレラの原因であることを示したわけではない。http://t.co/BmTE5Bnv

  • 05:02  コレラの原因はコレラ菌であって、特定の地域の水ではない。水がコレラと何らかの関係があることが分かるので、水を飲まないようにという対策は立てられる。しかし、疫学がコレラ菌を見つけ出すわけではない。

  • 05:10  疫学の有用性は認めるし、分子的メカニズムが解明されていないものは原因と認めないという頭の固いことも言わないが、疫学で認められた因果関係をもって「原因と結果は医学的に十分に解明された」とは言えないこともあるだろうと思う。

  • 05:14  著者は、レベルの違うもの(生体 vs 分子あるいは菌)を追求すればきりがないので疫学が発見した因果関係も医学のレベルでは十分な原因と結果の関係と認める立場なのだと思う。それで問題ないことも多いと思うが、要素還元主義の成功はそのレベルでとどまることをよしとはさせない威力がある。

  • 05:18  遺伝子治療や分子標的薬の効果を前にすると、「分子的なメカニズムを解明して治療に応用する」という戦略が成功していると言わざるを得ない。疫学も匹敵する成功を収めている。しかし、要素還元主義も成功を収めている。

  • 05:23  原因と結果の間の連鎖はいくらでも細かくなるから、医学的にはこれで十分というところで線を引かないと話が進まない。疫学レベルでよしとするか、分子的メカニズムの解明が必要とするか、そのどちらも状況によっては正しい立場となる、というのが今のところの自分の考え。玉虫色。


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
書評をいただきありがとうございます。
ところで、下記の「分子標的薬がその代表ですが、その有効性は目を見張るものがあります。」という「有効性」は、疫学的方法論によって人体で確かめられるということにお気づきでしたか?私は、要素還元主義の役割を否定しているわけではありません。要素還元主義を科学の必要条件であると考えてしまうことが問題だと指摘しているわけです。ご理解いただけますでしょうか?

>しかし、本書で要素還元主義とされている考え方、つまり細胞・分子レベルでのメカニズムの解明は「医学において必ずしも必要ではない(p37)」と書かれていますが、最近の癌治療の進歩はこの要素還元主義的方法論によるものが多いのも事実です。分子標的薬がその代表ですが、その有効性は目を見張るものがあります。

zusammen
2012/03/13 09:01
津田先生からコメントを頂き大変嬉しく思います。
ゲフィチニブ等分子標的薬の有効性は臨床試験で証明されているのは私も存じております。最近では日本からのNorth-East Japan Study Groupの結果が見事でした。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0909530#t=article

>要素還元主義の役割を否定しているわけではありません。要素還元主義を科学の必要条件であると考えてしまうことが問題だと指摘しているわけです。

理解いたしました。そして安心しました。本書では要素還元主義の失敗例が多く紹介されていたものですから、誤解があったかもしれません。

以下のblogでも”関連性だけであり、因果関係を証明した訳ではない。これが、疫学研究の成果で、もどかしさを感じる部分ですが、”と書かれておりました。本書でも問題にされていたがんセンターの研究のようですが・・・
http://nakaikeiji.jp/archives/51926631.html

先生の著書が広く読まれるよう、今後のご活躍を希望いたします。
三余亭
2012/03/14 22:15

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