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zoom RSS 【植物の見かけはどう決まる 塚谷祐一著 中公新書、からだの設計図 岡田節人著 岩波新書】

<<   作成日時 : 2004/09/28 23:25   >>

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【植物の見かけはどう決まる 遺伝子解析の最前線  塚谷裕一著  中公新書】
【からだの設計図 プラナリアからヒトまで  岡田節人著  岩波新書】

【植物の見かけはどう決まる】(以下【植物】)は、植物の色・形を決める遺伝子についての研究について書かれた本です。科学的知識を伝える本であるとともに、遺伝子研究の現場の雰囲気を伝える本です。1995年の初版ですから、科学的知識は現在から見ると古いものがあるかもしれません(専門家ではないので科学知識の内容について判断できません)。

一方、【からだの設計図】(以下【からだ】)は、イモリやゴキブリの脚の再生、突然変異を起こしたショウジョウバエなどの解説から、ホメオ遺伝子や接着分子が形態形成に果たす役割を解説しています。こちらは科学的知識の伝達が主目的の本です。こちらは1994年初版ですから、現在はこれより詳しいことがわかっているのではないでしょうか(こちらについても知識の内容について判断できません)。

この2冊ですが、植物と動物の違いはありますが、どちらも形態形成の遺伝子レベルでの解説であり、一般向けの新書という点でも共通していますので、まとめて感想文にします。

【植物】には研究現場の雰囲気や研究生活というものについても書かれており、私にはそちらの方が印象に残ってしまいます。私としては、46ページからの 科学発見とアマチュア -科学者が理詰めに考えるとは限らない が、面白く読めました。発見だけが生きがいで詰めの実験には余り興味のない研究者と、人の見落としたことの詰めを行って体系を完成させる研究者がいるというくだりは、「うんうんそうだね、何も研究者だけの話じゃないよね」と実感でき、すぐに何人かの顔が浮かびます。また、139ページから148ページまでの指導教官としての悩みや、同じような研究を先に発表されたときの“衝撃”などは似たことを経験され、身につまされる人も多いのではないでしょうか。こういった苦労話などが挿まれながら、遺伝子研究の過程が述べられます。

研究過程や知識の解説は、やはり門外漢には込み入った話で、分子生物学の知識が無い人には厳しいかもしれません。ただ、扱われる対象はシロイヌナズナ(アラビドプシス)だけであること、一般人には難しい概念の図解(例えば図3(p.13)、図20(p.80)や図40(p.166))も比較的多いこと、また難しい知識の説明の合間に研究生活の話題が書かれ息抜きとして読めること、など一般人にも読みとおせるようにさせたいという意図や工夫が感じられます。

前文でも書かれていますが自分史の面もありますので、そのようにも読める本です。科学知識の伝達としても、花の器官形成のABCモデル(p.12)などは私にもわかりやすく大変面白く読めました。複雑な物事をすっきり説明するという科学の面白さの一つが味わえます(現在のモデルはもっと複雑なようですが)。

一方、【からだ】では知識の伝達に重点が置かれています。とはいっても、【からだ】の方に著者の研究について述べられていないわけではなく、例えば143ページから146ページまで接着分子の研究について書かれています。しかし、【植物】に比べると自分の研究を伝えることには重点は置かれておらず、分量も少ないです。

解説されている“動物”は、プラナリア、ウニ、イモリ、ショウジョウバエ、カイメンなどなど。他にも癌細胞に話題が飛びます。そんなにたくさんと思われる方もいるかもしれませんが、これには著者の考えが反映されています。引用しますと、
  
生物のもう一つの本質である個と多様に関心を持つことなしには、科学に基づいた生物像というべきものは、完成できない。(p.23)

と、いうことで、多様な対象への説明が必要とのお考えです。

でも、やはり解説の分量が多いのは研究が進んだものになるので、第2章のホメオ遺伝子の解説はショウジョウバエが大部分です。この解説は面白いです。こちらも【植物】同様に、複雑なことが単純なことで説明できるという科学の醍醐味を味わえます。

どちらも、面白い本だと思います。生物学が好きで知識がある人はどちらも楽しめたのではないかと思います(楽しめたと過去形なのは古い本で手に入らないかもしれないからです)。物理好きで『生物学なんてただの羅列だろう』と思っている人にも、現象を簡単に説明する現在の生物学を知るきっかけとして。全然生物学の知識はない人はどちらもきついでしょう(そもそも読もうと思わないですか?)。【植物】は自分史もあるので、研究者の生活を知りたい人に。どちらも一般向けで専門家向けではありませんので・・・・

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するめいか幼稚園
2005/08/04 18:32

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