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zoom RSS 【高校数学でわかるマクスウェル方程式 竹内淳著 講談社ブルーバックス】

<<   作成日時 : 2005/12/04 01:57   >>

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マクスウェル方程式というのは電磁気学の基本で大変重要なのですが、ベクトル解析を知らないことには何の事だかさっぱり理解できない代物です。そのマクスウェル方程式を高校数学しか知らない人でも理解できることを目的に解説された本です。

私にとって電磁気学は実感に乏しい分野でした。それなりにテストの答案は書けるが、正答したとしても正答であるという実感が乏しい気分というのが抜けなかった気がします。力学ではそんな気分は強くなかったんですけど。一因としては、力学の実験では質量や加速度などを測定する道具が秤、ものさし、時計など日常生活でも使われるもので日常経験の延長として実験結果を把握できるのに対して、電磁気学の実験では私は日常では使用しなかった電流計・電圧計を使い、日常経験の延長となりにくいことがあるのではなかったかと思います。実体験の回数に基づいた実感の重さというのでしょうか、それが少ししか持てなかったことが原因なんだろうと思います。普段から電流計・電圧計を使うようなことを趣味としていれば電磁気学も親しみやすかったのだろうけど、無線やモーターには興味はもてませんでした。

さて、この本ですが、そんな私にも理解できるよう書かれております。第1部では、電磁気学の発展の歴史にしたがってマクスウェルが方程式をまとめるまでが述べられています。マクスウェル方程式に直接関連のある電磁気学の法則が簡単な数学で解説されており、この部分は特に難しいものはありません。電磁気学の発展に貢献したフランクリンやファラデーの生い立ちに触れながらの解説は、電磁気学に人間味を感じさせるものとなっています。第2部以降では、微積分を使った解説がされています。第1章が理解できれば、あとはそれを難しく見える数式で表現しただけです。周回積分は高校生には難しいかと思いますが、それ以外は数学や物理の得意な高校生なら大丈夫でしょう。

読後、電磁気学がスッキリように思います。実感という意味では微妙ですが、これは電磁気学をいろいろ使うことがあれば何とかなるでしょう。いろいろな方程式でごちゃごちゃしてしまった人が学び直すのにいい本だと思います。ただ、マクスウェル方程式はベクトル解析で微分形式で表現されていたような気がしますが、さすがにそこまで難しいことは解説されていません。

なお、著者の科学についての考えもところどころに述べられていて、それは科学哲学関係の本(科学哲学の冒険疑似科学と科学の哲学)を読んだ後では、なかなか面白いです。例えば、著者は実在論反実在論か、検討してみました。160ページでは電子の発見という言葉を使っているので、電子は実在するとする立場なのでしょう。しかし、法則については、”「電流のまわりに、どうして『右まわり』の次回が発生するのだろうか?この関係の内部にはまだ隠されているもっと根本的な関係があるのではないだろうか?」というさらなる疑問も浮かんでくる。(中略)物理学の理解としては、この関係を これ以上分解して理解することが不可能な基本的な関係=法則 であるとして受け入れるということを意味する。(中略)もっとも、将来においては、人類がさらに本質的な理解を得る可能性はあるかもしれない(p79)”ということで法則については不変の真理という捉え方とは少し違う立場のようです。

エーテルの話も出てきます。もともとは、電気や磁気がエーテルを媒体として力を伝えるとする近接作用が考えられていたようです。エーテルの存在は結局否定されますが、近接作用説はそれを支持する実験結果が行われたため、空間が電気や磁気を伝える媒体と考え直されたということです。その解説のあとに、”「クーロン力を伝える媒体は、エーテルという物質ではなく空間そのものである」それが人類が到達した解釈である。(p62)”と、ここでも科学理論については解釈とする立場に近いように思われました。

現役の物理学者の著者は、対象は実在、法則は解釈、とする立場に近いと思いましたが、どうでしょうか。

また、”「電流のまわりに、どうして『右まわり』の次回が発生するのだろうか?この関係の内部にはまだ隠されているもっと根本的な関係があるのではないだろうか?」というさらなる疑問も浮かんでくる。(p79)”というのは理性はどうしたって綱渡りですのカントを扱った章での”これが最終的な根拠だと見てとったとたんに、(中略)その根拠をさらに求めねばならないと感じ出す”という一文と関係してきますね。

科学の発展についても、必要だと考えていることを述べられています。”科学の進歩を支えるには、一見遊びのように見える「科学」を許容する経済的な余裕と、新しい概念を許容する思考上の自由が社会に要求される。(p31)”、”独創性の無い装置を使って研究する限り、他の研究者と同様の実験結果しか得られず、新発見は難しいということになる。(p42-43)”、”科学の発展にとって言論の自由のほかに、より重要な自由が存在する。その自由とは発想の自由である(p204)”など、進歩するには人と違うことを積極的にやらなくてはならず、自由に人と違うことができることが大切なのですね。

電磁気学を学び直すには良い本です。個人的には今まで読んだ哲学関係の本の内容が関係してくるところも面白く、読書ってこういう広がりがいいんだよねと実感した一冊。

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