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zoom RSS 【生命を捉えなおす 生きている状態とは何か 増補版 清水博著 中公新書】

<<   作成日時 : 2005/12/17 09:00   >>

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1978年初版で増補版が1990年に発行されているという相当古い本なので、なかなか手に入らないだろうと思います。しかし、複雑系や自己組織化がキーワードとなる前に筋肉収縮における動的協力性や非線形振動における引き込み現象などを解説され、これからは分子だけを調べる時代でなく、その秩序形成などの仕組みを理解することが生命を理解することだというメッセージには情熱を感じます。科学離れが進むと言われる昨今には、こんなにエキサイティングなことが現場で行われているということを伝えて、科学に興味を持ってもらう必要があることを考えれば、内容は古くても読み返す価値はあろうかと思います。

この分野の最近(といってもちょっと古いですが)の発展を扱った新書としては、【自己組織化とは何か 生物の形やリズムが生まれる原理を探る ブルーバックス】があります。そちらを先に読んだほうがわかりやすいかもしれないとおもいます。

はしがきには、「本書の目的は、「生命とは何か」をできるだけ普遍的な見方で捉えることであり、また生命に関する私の見方や捉え方を書くことであって、科学的な発見や事実を読者に正確に客観的に紹介することではありません。(p @)、「それなりの生きた知識と、そして望むべくは、若干の冒険心とロマンとを読者にお伝えすることができれば幸いです。(p A)」と書かれています。これだけを読むと、反科学のような雰囲気が漂いますが、第一章で、「自然は、自然科学でなければ決して理解できない面をもっている(p4)」と宣言し、自然科学の観点から生命を捉えていきます。

著者は「発展、進化のように逆行できない(不可逆)現象は、数多くの要素が同時に存在する体形で無ければ出現しないのです。したがってこのような自然の動態はアトミズムだけでは捉えられないのです。(p17)」と述べ、従来の科学の方法とは別の方法により生命を捉え直していきます。

従来の科学の方法は著者によれば「自然現象を細かく要素に分けた上で、各要素の性質を詳細に追求していくことが研究の主体(p15)」で「要素還元主義(p15)」とのことです。著者はそれらの研究を単純に否定せず、「生命の科学は、物質の化学を包含し、ある意味で、その延長上に作られると期待される(p26)」と、いままでの科学の成果をふまえての新しい生命の見方を作り出そうとしています。

著者はまず、熱力学・統計力学からエントロピー、エネルギー保存則、自由エネルギーなどの概念を説明し、ウイルスの形態が自由エネルギー最小の法則に従うことが説明されます。しかし、トカゲの尻尾の再生などはそのような原理では説明できないことが説明され、非平衡系での秩序形成が解説され、筋肉収縮や非線形振動における引き込みなど、生命現象が多数の要素が絡み合う現象として説明されていきます。

特に筋肉収縮の機構解明のところの流動セルの解説が面白かったです。初版が1978年ですので、今となってはどうということがない実験系なのかもしれませんが、どのようにしたら現象の機序を解明できる実験ができるのか、その創意工夫や苦労はやはり現場の科学者でないと伝えられないものがあると思います。

増補版の関係子は良くわかりません。

冒険心とロマン、伝わりました。

科学離れを止めるには、科学の成果として確立したものを解説するよりも、このような最前線での苦労や成果を解説したほうが良いように思いました。その方が、科学そのものの面白さを伝えることができるのではないかと思いました。実際には最前線の科学者にはそのような余裕がないでしょうから、大学や研究施設、科学ライターがこのような役割を担わないといけないのではないでしょうか。

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