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zoom RSS 【社会学入門 人間と社会の未来 見田宗介著 岩波新書】

<<   作成日時 : 2006/05/09 14:11   >>

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同じ著者による「現代社会の理論」という岩波新書があります。今から10年前の1996年10月21日に第1刷が出てます。その後書きで、「10年に1度くらいずつ、このように豊饒化された増訂版を公刊してゆくつもりである。(p183)」と書かれており、「はじめての分析哲学」を読んだ際に、再度「現代社会の理論」を斜め読みをした際にこの文章をみつけ、そろそろ10年になるがどうなったんだろうかと思っていたところ、「社会学入門 人間と社会の未来」が本年4月20日第一刷として出版されました。この新書の後半は「「現代社会の理論」の後編との意味をかねている(p213)」とのことで、「現代社会の理論」から10年経過して約束されていた増訂版が出たと解釈しています。

「現代社会の理論」は考えさせられる本でした。今回の「社会学入門」は、すっきり納得できるところ、どうだろうと思うところ、いろいろありましたが、大変面白く読ませていただきました。

特に考えさせられたのは第5章、2000年の黙示録、でした。

ヨハネの黙示録は「特に不遇な階級、民族、地位にあるキリスト教徒たちの間で、もっとも親しまれ、強い共感と支持を得てきた文書(p126)」で、その内容は「現在この世界のなかで富み、栄えているものたちの都(バビロン)が、神の仮借なき懲罰をうけてこなごなに崩壊し、現在不遇で、貧しく、この繁栄の都から疎外されている人々がそれに代わって栄光の座につく、という預言の物語(p126)」だそうです。著者は、D.H.ロレンスによる「アポカリプス(黙示録)」を紹介し、その「アポカリプス」では「「バビロン」が、古代ではローマ、宗教改革期では再びカトリックの本山ローマ、そして現代では「ロンドン、ニューヨーク、パリ」として不遇のキリスト者たちによって想定されてきたことを伝えています。1929年のことです。(p128)」ということです。著者は、「パクス・アメリカーナによるグローバリゼーションという世界の中で、原初のキリスト教徒たちの置かれていた位置は、今日ほとんど、不遇なイスラム教徒たちのおかれている位置と、構造的に等価のものであるように見えます。(p128)」という流れで、2001年9月11日のNYでのテロに引き続く世界情勢を解釈しているようです。なるほど、おっしゃるとおりだと思いました。

さてそこから著者は、この「構造は変わっていない。(p129)」ことの問題は、キリスト教やイスラム教が一神教であるということよりも、「「一神教」という投射の形態の根元にあるもの、この社会的な関係の客観性が生み出す感情の絶対性のようなもの、ここに問題の核心はあるように思う。(p129)」と主張します。

著者は、吉本隆明の「マチウ書試論」を紹介し、その中で吉本隆明が「「関係の絶対性」という核心をつかみだしている(p130)」としています。著者による具体的な説明では、「関係の絶対性」とは「圧倒的な軍事力と貨幣経済の力によって遠隔的に収奪され支配されているキリスト教徒たちとの関係の客観性の中で、この都市の繁栄と幸福を少しでも共有するもの、それを支えているもののすべてに対して、一人一人の自由な意思による善意とか思想の内容とは関わりなしに、絶対的な敵対の関係が成立してしまっているからだ、という認識(p130-131)」だそうです。抽象的レベルの集団が憎ければ集団を構成する個人がどうあれ憎いという、社会集団に対する憎悪での坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、ということでしょう。

著者は引き続き吉本隆明の思想について述べています。吉本隆明は「「関係の絶対性」を、反逆の倫理を根拠づけるものとして、擁護する思想家であるもののようにみられてきました。(p139)」しかし、「関係の絶対性」は、「生きるということの積極的な根拠としては、貧しいもので」「不当な秩序に屈服することなしに生きつづけることの積極的な思想として吉本がのちに獲得するのが<自立>という概念でした(p139)」と、いうことです。

著者も、<自立>が重要であると考えてらっしゃるようです。「関係の絶対性」を解決するには「私たちの社会自身が自立すること(p140)」しかないと書いています。「自由と幸福を永続的に持続することの出来る社会を、外部を収奪し抑圧することのないような仕方で、自立するシステムとして構想することができるということを、「現代社会の理論」という、その次の仕事のなかで追求しています。(p141)」

というわけで、「現代社会の理論」を読まなくてはならなくなるわけです。

「現代社会の理論」からですが、「情報化/消費化社会というこのメカニズムが、必ずしもその原理として不可避的に、資源収奪的なものである必要もないし、他民族収奪的なものである必要もない(現代社会の理論 p147)」として、情報化/消費化社会の可能性を見出している、と思います。

「現代社会の理論」で、具体的で即効性のある解決策が出てくるわけではありませんが、社会の変化の可能性や方向性に思いを馳せることは出来ます。実現しても遠い遠い先の話ですが。

他の章も、面白かったです。第6章人間と社会の未来で扱われた、生態学でよく出てくるロジスティック曲線と世界人口の変化からの論考はちょっと微妙な感じですが、言わんとしたいことは良くわかります。別の章では、戦後から現在までを夢の時代と虚構の時代として考えるのも面白いですし、現在起きているいろいろなことが説明できるように思いました。

「現代社会の理論」と合わせて読めば一番でしょうが、この本単独でも面白いと思います。

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