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zoom RSS イレッサ:厚労省「積極的選択、根拠なし」

<<   作成日時 : 2007/02/04 19:24   >>

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間質性肺炎の副作用で話題になったイレッサ(ゲフィチニブ Gedfitinib)ですが、ドセタキセル(Docetaxel 商品名:タキソテール)と比較して延命効果は変わりなかったとのことです。毎日新聞です。

イレッサ:厚労省「積極的選択、根拠なし」 延命効果、既存薬超えず

 肺がんの抗がん剤「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)について、輸入販売元のアストラゼネカ社は1日、日本人患者約500人を対象にした臨床試験の結果、従来の抗がん剤「ドセタキセル」と比べて生存期間を延ばすとは言えなかったと発表した。厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の安全対策調査会はア社の報告を受け「肺がん患者の2度目、3度目の抗がん剤治療で、一般的にドセタキセルと比べイレッサを積極的に選択する根拠はない」との見解を出した。

 抗がん剤の延命効果を日本人の患者で調べた結果が国に報告されたのは初めて。イレッサは欧米での試験で延命効果を証明できなかったが、「東洋人では延命効果が示唆された」として日本では販売を認められている。

 ア社は03年9月以降、抗がん剤治療歴のある肺がん患者490人を無作為に半数に分け、それぞれをイレッサとドセタキセルで治療した。イレッサで治療された患者の1年生存率は48%で、ドセタキセルの54%を下回った。患者の半数が死亡するまでの期間もイレッサは12カ月で、ドセタキセルの14カ月に満たなかった。開始後1年未満で、ドセタキセルの方が生存率が高いことが示唆された。副作用による死者は、イレッサで3人。ドセタキセルはなかった。

 一方、「生活の質が改善した」と評価された患者は、ドセタキセルの約1割に対しイレッサで約2割に達した。【高木昭午】

毎日新聞 2007年2月2日 東京朝刊


どういうスタディ・デザインなのか(優越性試験?非劣性試験?)で結果の解釈も変わりますし、そもそも両群に統計的有意差があったのかどうかも書いていないので、この記事だけではイレッサの承認を取り消すべきなのかどうなのかわからないのですが・・・・

生活の質が改善したのがイレッサの方が多いようなら、同等性試験とか非劣性試験で試験を行えば、有用と判断できるかもしれないです。他に効く化学療法が無いという状態でなら、何らかの有用性が出るかもしれません(その場合、best supportive careとの比較ということになるでしょう)。その場合、イレッサの適応は3番目、4番目の化学療法が無効だった場合となって生き残るかもしれません。多数の人を集めての結果ですから、最初に使って効いたという人がいても、それはそれで、この試験の結果となんら矛盾するものではありません。

さて、承認された薬なのに、何故今ごろ有効性の議論しているのか。イレッサの承認審査の資料がPDF形式でこちらにありましたが、有効性のところに、奏効率と生存率があります。第U相試験なので、生存率の数字は出ていてもこれが本当に今までの治療より良いかどうかは無作為化比較試験をしなくては判断できないわけです。資料の最後の方に、承認の要件として無作為化比較試験を行うことと書かれていると思います。

日本では抗癌剤の承認は有効性の評価を生存率ではなく腫瘍縮小に基づいて行う試験の結果に基づいているので、イレッサもそれに倣ったということでしょう。(臨床試験の種類については、こちらのパワーポイントの資料や、こちらで。)ということで、市販後に生存率で有効性を検討すると、生存率では差がないということにもなるわけです。

生存率で有効性がわからないものをどうして承認するんだというご意見はもっともで、私もそう思うのですが、こちらにあるように、
癌は年間死亡者が20万人を超えるなど社会的にも重大な疾患となっていることから、より優れた抗癌剤の速やかな臨床使用が望まれている。これらの背景から抗癌剤の承認審査は他の医薬品と異なり、いわゆる臨床第2相試験までのデータで行われ、検証レベルの試験は市販後において行われる状況となっている
イレッサはFDAも第U相の結果で承認しているようです。アストラゼネカのプレスリリースにはそう書いてありました。(pfizerのサイトのPDFですが、アメリカでの薬の承認の話が出ていました。これを読むと、イレッサは例外的なことがわかります。)

イレッサは、申請から承認までの期間が短いことでも有名でした。毎日新聞のサイトにありましたが、
なぜ、イレッサはこんなに“優遇”されたのか。厚労省は、市場投入が遅れると患者の不利益になると判断したとする。

東京のがん専門医は「発売前からメディアで取り上げられ、自ら投与を願う患者が多かった。医師としても断りにくい」と話す。ア社は初年度約7500人への投与を想定していたが、昨年12月までの販売錠数から推定される投与患者は約1万9000人。副作用データが集まらないうちに短期間に利用者が膨らんだことが、想定を超える副作用被害につながった。厚労省は昨年10月、「緊急安全性情報」を出し注意を呼びかけている。

この副作用問題が新薬審査のスピードアップに水をさすことを懸念する声もある。患者団体「癌(がん)治療薬早期認可を求める会」(大阪市)の代表を務める三浦捷一医師は、「副作用の有無はある程度予測できるし、イレッサが末期肺がん患者の2割に効果があるのは確か。副作用ばかりが強調されて、新薬認可に滞りが生じるようでは困る」と話す。


まずは厚労省の「市場投入が遅れると患者の不利益」という意見ですが、あの時は分子標的薬は副作用が少ないものと考えられていたので、厚労省を責めるのは酷な気もするのです。しかし、今後は効果の無いものを売りつけるのは悪徳商法と一緒と考えれば、抗癌剤に関してはやはり従来のものより効果がある、あるいは従来のものと同じくらいの効果だが副作用が少ないと証明できたものを市場投入すべきでしょう。現在の第U相試験の結果で承認するのではなく、第V相試験の結果で承認したほうが良いと思います。あせる必要は無いと思います。何か言われたら、「効果の無いものを売ることは詐欺」と言い返せばいいです。承認期間が事務手続きの迅速化で短くなるなら、それに越したことは無いですが。

しかしながら、「市場投入を早く」という考えは社会の要請に応えるという意味も多分にあるのでしょう。消費者が、「効果があると証明されてから薬は買う」という考えではなく「効果がありそうだったら(実際には無くても)買いたい」という考えであれば、厚労省は今の第U相試験の結果で承認することを変更しにくいと思います。これは承認取り消しの薬の歴史を紐解いて、そんな薬にお金を払って馬鹿を見ることのつらさを消費者に実感してもらうしかないかもしれません。

患者団体も、早く承認しろというよりも、生存率が改善するものだけを購入するようにしたいと表明された方が、結局は安全・安心だと思います。無駄な部分を省いて審査が早くなるならそれは主張してよいとは思いますが、第U相試験の結果を根拠に承認しろとは言わないほうがよろしいのではないでしょうか。何もやることが無い、というなら、ある程度のリスクを覚悟して生存率の改善が証明されていない薬を使っても良いと思いますが、お金を何に使うか、という問題も絡んできます。

また、がんより怖いイレッサというタイトルはどうかと思うし、イレッサを内服して効いている人に止めろというつもりは無いのですが、そこに書かれている
 イレッサが使われる肺ガンの患者さんは、確かに他に治療法がない方です。何か治療法ないか、何とかならないか。と考える気持ちはよくわかります。私自身も母を癌で亡くしましたのでよくわかります。しかし、余分な治療をすることによって命をかえって縮めることは多いのです。イレッサもその一つです。(注:イレッサもその一つということに対しては、三余亭は今のところ反対です。)
 骨に転移した場合の痛みや高カルシウム血症に対する治療(とりわけ痛みの治療)、いずれは必ずやってくる呼吸困難の症状にたいする適切な治療など、大切な治療がおろそかにならないように、しっかりと医師にしてもらうことが大切ですし、元気なあいだにやれること、やりたいことをやっていただくのが大切とおもいます。
 私のははも短い期間でしたが、せいいっぱい世話して、好きなことをしてもらって満足してもらえたとおもっています。
という覚悟は、積極的な治療は何も無いというようなことを言われたときには必要なのだろうと思います。自分にできるかどうか自信が無いですが。

自戒を込めて一言。やはり第V相までみないとわかんないもんだ。(第U相の結果に飛びつきたくなる気持ちは良くわかるんです。そういう意味では、「あるある」にコメントした専門家の気持ちはわかります。)

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ゲフィチニブとドセタキセルの比較試験についての医薬品等安全対策部会安全対策調査会議事録
前に触れたイレッサ(一般名gefitinib)とタキソテール(一般名Docetaxel)の比較試験についての 平成18年度第2回医薬品等安全対策部会安全対策調査会の議事録が公開されていました。 ...続きを見る
三余亭
2007/04/26 00:47
イレッサ 効果あり!
ホメオパシーを批判するために臨床医学の科学性ということを前に書いたような気がしたと、今まで描いたものを見直していたら、イレッサ:厚労省「積極的選択、根拠なし」 とゲフィチニブとドセタキセルの比較試験についての医薬品等安全対策部会安全対策調査会議事録 が見つかりました。 ...続きを見る
三余亭
2010/08/26 23:55

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