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zoom RSS 【公立学校の底力 志水宏吉著 ちくま新書】

<<   作成日時 : 2008/09/25 07:05   >>

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【学力を育てる】の著者による新書。著者が今までかかわった12の公立学校(小学校4、中学校6、高校2)の取り組みを紹介して、著者の考える「力のある学校」とはどんなものかがまとめられています。

【学力を育てる】
では、著者たちが行った調査に基づいての議論が大半でしたが、本書ではcase studyというか個々の学校の話が中心になります。それぞれ工夫されたところがあり、自分の学校時代と比較して感心したり、環境の違いに驚いたりと楽しく読めました。

いろいろと工夫されている学校があるのですが、印象に残ったことに少々触れてみたいと思います。

福岡の金川小学校では子供たちの学力実態を把握するために、標準学力調査、生活実態調査、学習実態調査、自尊感情5領域テスト、自己他者肯定間テスト、就学前実態調査など、さまざまな調査を行っているとのことです。学力を上げようとすれば点数を調べるだけではなく、その他いろいろのことも調べて対応しなければならないようです。

大庄北中学の先生の「いま、学校はどこまで家庭の役割を肩代わりするべきなのか。”やって当然の仕事だ”と言われたらしんどくなる」と漏らされた言葉が印象的でした。自主ノートの取り組みだとか、いろいろ頑張っているようなのですが、やっぱりお疲れなのですね。

新潟の聖籠中学校では、教科センター方式で授業を行い(生徒が教室を移動する)、ホームベースと呼ばれる学級以外の集団を作っているそうです。ホームベースと呼ばれる学級より少し人数の少ない集団を国語や数学などの少人数・習熟度別指導や学校行事の単位とし、通常の学級を道徳や一部の行事の単位とするのだそうです。教科センター方式はわかるのですが、ホームベースは説明を読んでもピンときません。

いろいろな学校があるものです。

最後の章で著者が「平成18年度大阪府学力等実態調査報告書」にまとめたことが紹介されているのですが、次のような事実があるとのことです。

1 学校がおかれている地域の経済的背景(「就学援助率」「単身家庭率」等)と学力との間には、かなり大きな相関関係が存在する。特にそれは、中学校で顕著である。

2 小学校では、学力向上についての学校の取り組みが社会経済的ハンディキャップを乗り越える結果に結びつくことが多いが、中学校では、それがかなり困難になる。

3 それらの結果として、恵まれた地域に立地する学校はさしたる努力をしなくても学力面で成果を出しやすく、逆に社会経済的に厳しい校区を持つ学校は努力を重ねても結果を出しにくい、という傾向がみられる。そして、その傾向は、中学校でより強くなる。(p238)


これを踏まえますと、学力テストの結果だけ公表しても、学校の背景がわからなければ学校の努力が足りないとは言えないのだ、と思います。

たとえ話、というほどではないのですが、医療機関の癌の治療成績公表の際の注意点をいくつかあげると、

1. 病期が治療成績に影響を与える
例えば、病期が進んだ癌、つまり進行した癌の場合は治療成績が悪くなることが一般的です。ですから、進行した癌を扱わない(例えば初期の癌にのみ適応となる治療を行い、進行癌の治療は他医に紹介するなど)場合は、数字だけ発表されると癌の治療成績がよく見えるわけです。ですから治療成績は少なくとも病期とあわせて考えなくてはならない。

2. 症例数が少ないことによる誤差
治る可能性が50%の癌であっても、その病院で治療した患者が全員治った、ということはありうるわけです。治療した患者が3人しかいなければ全員治る可能性は0.5×0.5×0.5=0.125、つまり12.5%の可能性で全員治ることが起きてしまう。この癌の治癒率は50%くらいが平均なのに、この病院では100%だ!というようなことが起きてしまうわけです。症例数が多ければこういう誤差は少なくなります。ですから治療成績の数字だけではなくて、患者数も考慮する必要があるわけです。

3. 合併症による影響
腎不全や心不全がある、そこまでいかなくても糖尿病が悪い、などの場合、標準的な治療が行えない可能性があります。シスプラチンやアドリアマイシンなんかそうですね。そうなるとどうしても使う薬が2番手の薬になるので期待される治療効果も低めになってしまう。腎不全や心不全の患者の割合が極端に高い癌の治療を行う医療機関というのはあまりないように思いますが、そういうことも考慮する必要があるかと思います。

4. 年齢構成による影響
高齢の方の期待余命は若い方に比べて短いのが当然。ですから、同じ病期で粗生存率で比較した場合、高齢の方の治療成績は若い方よりも良くはならない(同じか、悪いか)のが普通。例えば、声門癌T1N0M0は放射線治療での局所制御率が90%らしいので、9割の方が治ってくれるわけですが、高齢の方の場合は他病死が多くなりますから粗生存率としてはその年齢の期待余命を反映したものになるでしょうし、若い方の場合は高齢者よりも期待余命が長いわけで高齢者の方よりも粗生存率が良くなるでしょう。極端に高齢者が多い医療機関では粗生存率が悪くなる可能性があるわけです。

とまあ、治療成績発表にはいろいろと注意しなくてはならない点があるのです。

学力テストの結果の解釈も、同様だと思います。生徒の家庭環境、地域の状況、学校の予算、教師の状況とか、いろいろ影響を与える要素も考慮しなくてはならないでしょう。

序章のタイトル「逆風の中の公立学校」の通り、公立学校に対するまなざしが厳しいものがあるようですが、頑張っている先生は応援したいものです。

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